研究課題/領域番号 |
19H00663
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
高橋 和貴 東北大学, 工学研究科, 准教授 (80451491)
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研究分担者 |
永岡 賢一 核融合科学研究所, ヘリカル研究部, 教授 (20353443)
鷹尾 祥典 横浜国立大学, 大学院工学研究院, 准教授 (80552661)
安藤 晃 東北大学, 工学研究科, 教授 (90182998)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 磁気ノズル / プラズマ流 / 運動量輸送 / ディタッチメント |
研究実績の概要 |
磁気ノズル中プラズマ流の運動量輸送・変換・損失過程およびディタッチメントに関して,広範なパラメータ領域を包括した実験を主軸とした研究を行い,以下の知見を得た. 1- 局所的な運動量ベクトルを計測可能なMomentum Vector Measurement Instruments (MVMI) を用いて,プラズマ源内部および磁気ノズル中の運動量流束の分布計測を行い,プラズマ発生部内壁に損失する運動量・エネルギーの分布を同定し,その抑制手法に関しても知見を得た.また磁気ノズル中では,周辺領域に存在する高エネルギー電子群が推力発生に大きく寄与していることを明らかにし,電子反磁性効果によるものであることが明らかになった. 2- 直径10cm級の13.56MHz駆動のヘリコンスラスタを設計製作し,燃料ガスの導入方法を改善し,最大推力70mNを得ることに成功し,ヘリコンスラスタの推進性能を更新した.また更に大口径化を進めるため2MHz帯のヘリコンプラズマ源の開発を行い,高密度プラズマ発生に成功した. 3- 電子の熱力学特性に関して,電子エネルギー分布関数の計測によってポリトロープ指数を評価した.その結果,電子は断熱膨張することを実証し,磁気ノズルによる推力発生モデルと矛盾しないことを明らかにした.またそのポリトロープ指数は磁場強度によって変化し,弱磁場では等温膨張を示すことを明らかにした. 4- 磁気ノズル中の静電波動計測に着手し,非線形相互作用による異常輸送の評価につながるデータを得た.このデータにより,推力損失やディタッチメントに関連する重要なファクターとなる可能性を示した. 5- 計算機シミュレーションにより,磁気ノズル中で自発的に誘起される周方向電流およびローレンツ力を評価し,実験と定性的に一致する結果が得られた.このことから,スラスタ解析に向けたコード開発が順調に進んでいる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の運動量変換・輸送・損失過程に関して,Momentum Vector Measurement Instrumentsを用いて当初の計画通りに評価を進め,エネルギー・運動量損失の分布や磁気ノズル中での軸方向運動量増大に関するデータが得られ,順調に進んでいる.また,プラズマ電位をゼロとすることでシースの効果を排除可能であることが分かり,磁気ノズルと電子の相互作用のみを調べることが可能な装置構築に成功した.その結果,磁気ノズル中の電子の熱力学特性に関して詳細な評価が可能となり,電子と磁気ノズルのエネルギー相互作用に関して調べることが出来た.これにより,断熱膨張する電子や,磁場強度によって変化する電子と磁気ノズルの相互作用を熱力学的観点から評価可能となり,当初の計画以上の成果が得られた.さらには,ヘリコンスラスタの推進性能の記録更新等,物理的課題に加えて工学的課題に関する実験も進展し,当初の計画以上に進展しているといえる.
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今後の研究の推進方策 |
研究期間終了までに,磁気ノズル中のプラズマ運動量輸送・変換・損失過程の総合的理解およびディタッチメント現象の発現に向けた実験を推進する.具体的には,磁力線変形がプラズマ流ダイナミクスに及ぼす効果の解明や,自発的に励起される静電波動のプラズマ粒子輸送に対する効果を調べる.必要に応じて,広範な空間領域を計測するために大口径真空容器を導入して,スラスタ出口から磁気ノズル下流域を包括した実験を推進する予定である. またこれらの実験データに対して,理論モデル構築に加えて,引き続き計算機シミュレーションを用いた研究を進め,特にプラズマ発生部と磁気ノズルを連結して解析可能なコード開発を進める. 上記のように,実験研究を主軸として,適宜シミュレーション研究と連携をとることで,磁気ノズル中プラズマ流のダイナミクスに関連する諸現象について,総合的な研究を展開する.
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