研究課題/領域番号 |
19H00664
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
加藤 俊顕 東北大学, 工学研究科, 准教授 (20502082)
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研究分担者 |
大塚 朋廣 東北大学, 電気通信研究所, 准教授 (50588019)
澁田 靖 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 准教授 (90401124)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | カーボンナノチューブ / グラフェンナノリボン / プラズマCVD / 原子構造制御合成 |
研究実績の概要 |
研究四年計画の二年度目にあたる今年度は、1次元ナノカーボン材料の原子レベル構造制御合成と応用に向けた研究を行い以下の成果を得た。 第一に、初年度に立ち上げたその場観測プラズマCVDを用いることで、(6,5)ナノチューブの90%以上の超高純度合成を実現した。これはこれまで報告されている(6,5)ナノチューブの世界最高純度である。次年度以降では、プラズマ条件の最適化によりさらなる高純度化、及び(6,5)以外のカイラリティの選択合成を目指す。 第二に、グラフェンナノリボンの量子デバイス応用に関して、本手法で合成したグラフェンナノリボンにおいて、量子化に伴う励起準位が明確に発現することを実証した。また、通常数百ミリKでしか安定に存在しない励起準位が20K以上の高温条件でも観測可能であることを明らかとした。さらに、グラフェンナノリボン合成に用いるニッケルナノバー長とプラズマCVD合成条件を最適化することで、励起準位が観測できるグラフェンナノリボン量子ドットを高確率で合成することにも成功した。次年度以降は、高確率で励起準位観測が可能な本GNR量子ドットを用いることで、二重量子ドットを活用した量子演算の実証を試みる。 第三に、1次元ナノカーボン材料と類似の原子層物質である遷移金属ダイカルコゲナイドに関して、一般的な気相―固相相転移に加え、液相―固相相転移による結晶成長が支配的であることを実験的に明らかにした。さらに、液相―固相相転移において、液相前駆体の化学ポテンシャルが核成長に与える効果を熱力学的観点から実験的に説明することに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究四年計画の二年度目に当たる今年度は、初年度立上げを行った装置を本格稼働し、来年度の目標である原子レベルでの構造制御合成に向けた基礎データの蓄積を当初の目的として実験を行った。実際、その場観測プラズマCVD装置、極低温物性評価装置、分子動力学計算システム、精密熱電計測システムが順調に稼働し、実験データを効率よく取得することを達成している。 さらに、データ蓄積に加えて、いくつかのテーマにおいて当初の期待を大きく上回る成果が得られている。特にカーボンナノチューブのカイラリティ制御に関しては、世界最高純度の(6,5)カイラリティ合成に成功している。また、グラフェンナノリボンにおいても励起準位が観測可能な量子ドットの高効率合成を達成している。これらは来年度に予定していた達成目標である。 以上の理由により、当初予定のデータ蓄積のみならず、原子レベルでの構造制御合成を一部達成していることから、当初の計画以上に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
研究四年計画の三年度目以降にあたる今後の研究では、初年度に立ち上げたその場観測プラズマCVD装置を活用し、1次元ナノカーボン材料の原子レベルでの構造制御合成を実現する。具体的には、令和二年度に達成した(6,5)ナノチューブ選択合成の更なる高純度化、及び(6,5)以外のカイラリティの選択合成を目指す。また、これらの合成機構解明にも取り組み、実験結果と分子動力学シミュレーションとの相互連携により、原子構造決定におけるプラズマ効果の解明を行う。 応用開拓に関しては、令和二年度に達成した励起準位が観測可能なグラフェンナノリボン量子ドットを活用し、外部磁場印加による量子ドット内におけるスピンの制御、及び二重量子ドットを活用した量子演算の実証を試みる。さらに、熱電応用に関しても、1次元ナノカーボン材料を用いた高効率熱発電を目指すことで、本手法で合成した原子構造制御ナノ材料の応用展開の可能性を探求する予定である。
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