研究課題/領域番号 |
19H00666
|
研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
西谷 智博 名古屋大学, 未来材料・システム研究所, 客員准教授 (40391320)
|
研究分担者 |
目黒 多加志 東京理科大学, 理学部第二部物理学科, 教授 (20182149)
洗平 昌晃 名古屋大学, 未来材料・システム研究所, 助教 (20537427)
成田 哲博 名古屋大学, 理学研究科, 准教授 (30360613)
保田 英洋 大阪大学, 工学研究科, 教授 (60210259)
本田 善央 名古屋大学, 未来材料・システム研究所, 准教授 (60362274)
石川 史太郎 愛媛大学, 理工学研究科(工学系), 准教授 (60456994)
田渕 雅夫 名古屋大学, シンクロトロン光研究センター, 教授 (90222124)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 窒化ガリウム半導体 / AlGaAs半導体 / 電子ビーム / 負電子親和力表面 |
研究実績の概要 |
本研究では、電子線による損傷が制御され、ドリフトやブラウン運動が原因の像ブレを解消するだけでなく、ナノ秒領域までの試料の動態や反応の時間分解能までの観測を実現するため、2019年度の実施研究は設定した目標に対して、半導体材料とその表面処理方法の追究、および電子銃・電子顕微鏡の整備と共に液中試料セルの開発と試料・溶液の条件追究を次の通り行った。 半導体材料の追及:開発を進めるInGaN半導体では、Mgドーピング量と量子効率の相関から高い量子効率が得られる表面層のMgドーピング量の最適値を見いだした。また、InGaN半導体、AlGaAs半導体共に0.1W/cm2以上の励起レーザーのパワー密度に対して量子効率が下がっていく現象を捉え、引き出し電荷を制限する半導体フォトカソード特有の課題を見いだした。表面処理方法の追究:昨年度のあいちSR、理科大での表面観測を通して得た高耐久化手法の実証として、フォトカソード温度を130-160度程度にし電子ビーム生成したところ室温に比べて、2倍長い耐久性能を持つことを明らかにした。また従来のYoYo法とは異なる表面活性化として活性化中の光電流増大を一様に行う手法により従来より高耐久が得られることを確認した。電子銃・電子顕微鏡整備・液中試料ホルダー:要件を満たすために電子銃と電子顕微鏡との間に縮小ビームオプティクス・ビームシフト・真空作動排気を兼ねた取り合い系の作成を行い、基本仕様の評価を行った。他方で独自開発した液中試料セルを用いた水溶液中の金コロイドのブラウン運動の観測に成功し、従来の直流電子ビームでは捉えられない動きを持つ液中試料の条件出しが完了した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
理由 本年度は、半導体、表面、電子銃・電子顕微鏡の整備、条件だし・最適化を遂行し、次に示す通り“最終目標に対する達成度90%”の予定をクリアした。 半導体材料(達成度90%):(1) AlGaAs系、GaN系半導体の結晶成長作成条件である成長層の膜厚、組成およびp型濃度をパラメータとした半導体構造の結晶成長した(達成度100%)。(2) 作成した半導体の表面にセシウムを蒸着することで負電子親和力表面処理を施し、量子効率とその寿命測定を評価した(達成度100%)。(3)(2)で得られた実験結果を半導体構造設計へフィードバックし、①②を行程として、高い量子効率と速い応答性、高耐久を兼ねる半導体フォトカソードを実現する(達成度80%)。(4) (3)までの行程で有望と判定した半導体フォトカソード素子を名古屋大学所有の半導体フォトカソード電子銃を搭載した透過型電子顕微鏡による像観測により、可干渉性を評価する(達成度90%)。(5) (4)で得られた評価結果を、更に各半導体構造の設計へとフィードバックし、より可干渉性の良い電子ビーム発生に優れた半導体を作成する(達成度80%)。 表面処理方法(達成度90%): (1) NEA表面処理過程、表面劣化状態について表面観測を行い(達成度100%)、(2) 高量子効率かつ高耐久な表面処理方法を見出し(達成度100%)、また(3) 励起パワー密度の量子効率依存性観測から実験的に表面構造・ポテンシャルモデルを見い出した(達成度70%)。 電子銃・電子顕微鏡整備・液中試料セル(達成度90%):電子銃は電子ビームの縮小・シフトを行うビームオプティクスを製作・評価を行い(達成度70%)、名古屋大学および大阪大学所有の電子顕微鏡の設置およびカメラの整備が完了し(達成度100%)、液中の金ナノコロイドのブラウン運動の観測まで至った(達成度100%)。
|
今後の研究の推進方策 |
本研究の最終目的である“電子線による損傷が制御され、ドリフトやブラウン運動が原因の像ブレを解消し、ナノ秒領域までの試料の動態や反応の時間分解能までの観測の実現“に向けた推進策として、20年度見いだした新たな課題を解決する半導体フォトカソード開発と共に、19年度のから引き続き焦点を絞った目標達成を次の通り実施する。 ・顕在化した新たな課題である半導体フォトカソードの引き出し電荷の励起パワー密度依存性の解決策として、半導体表面のポテンシャル構造に着目した半導体を作成・評価する。 ・A)~C)に対応した実験が可能な電子銃と電子顕微鏡の整備と観測を進める:A)電界放出型電子源と同等の単色性と1000倍以上の高い電流引出し(>1mA)。B)凍結試料を想定したドリフト(~10nm/s)に対しては1ミリ秒、液中試料のブラウン運動(~10μm/s)に対しては100ナノ秒以下の速い撮像が必要のため、パルス幅は100ナノ~1ミリ秒の範囲で調整可能であること。C)パルス繰返し周波数は最小1パルス生成から100マイクロ秒以下の間隔で生成し、かつ検出器やカメラと同期が可能であること。
|