研究課題/領域番号 |
19H00670
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
清水 格 東北大学, ニュートリノ科学研究センター, 准教授 (10400227)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | ニュートリノ / 素粒子実験 / 実験核物理 |
研究実績の概要 |
検出器の極低放射線環境と拡張性において非常に優れた性能を発揮し、世界の二重ベータ崩壊研究を大きくリードするKamLAND-Zen実験では、約750 kgの同位体濃縮Xe(136Xe:91%)を液体シンチレータに溶かし込み、40 meV程度までのニュートリノ有効質量を検証する。本研究では、高性能液体シンチレータ検出器を実現することによってエネルギー分解能を限界まで高め、逆階層型の有効質量(> 20 meV)を検証し、ニュートリノの質量階層構造を決定する。目標の検出感度を確実に達成するため、高性能小型プロトタイプ検出器によって高性能化の実証試験を行い、同時に低バックグラウンド観測に不可欠となる検出器素材の極低放射能分析を実現する。本年度は、実機装置に向けた量産が可能な液体シンチレータ・アクリル容器・反射シート・集光ミラー・光センサー、タンク・水槽から構成される高発光シンチレーション観測装置の設計を行った。液体シンチレータには安価で発光量・透過率が高いリニアアルキルベンゼン(LAB)に発光剤を添加して使用するが、発光剤の種類や分量などを最適化した。タンクに装着する反射シートは、測定によってタイベックシートが最適であることを確認した。光センサーには耐液性のある20インチ高量子効率PMTを選択し、液中での波形・ゲイン・暗電流の測定など必要な動作確認を行った。また、集光量を最大化する多角形型のアルミ蒸着ミラーを試作し、集光ミラーを量産する体制を整えた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目標であるマヨラナ質量の高感度探索のための検出器の高性能化を目標としていたが、高発光シンチレーション観測装置の製作に必要な液体シンチレータ・反射シート・耐液光センサー・集光ミラーの開発が完了した。順調に進展した理由として、現在の検出器で用いられている製作・測定技術を今回の開発に応用できたことが挙げられる。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は、高発光シンチレーション観測装置の製作と性能評価を行う。液体シンチレータには安価で発光量・透過率が高いリニアアルキルベンゼン(LAB)にPPOとBis-MSBを発光剤として添加して使用する。また、集光ミラーには受光面積を最大にした多角形ミラーを使用する。検出器に用いる各材料はあらかじめICP-MS分析を行い、低放射能を保証する。製作後に放射線源やLEDによる装置校正を行い、高性能化の実証試験と極低放射能分析を実現する。
|