質量がミリグラム程度の微小なソースマスを使った重力測定実験の実現を目指して装置開発を進めた結果、下記の4項目に成功した。(1)Q値が100万程度の2本吊低散逸懸架鏡の開発、(2)変位感度が3×10^-18 m/sqrt(Hz)@500Hzを実現可能な強度と周波数が安定化された光源の開発、(3)真空対応の低周波防振装置(>0.5Hz)の開発、(4)共振器長が従来よりも5倍短い(周回長=2cm)光共振器の開発。 研究期間内に光共振器を動作させることはできなかったため、重力測定実験には未だ着手できていないが、上記の4項目から、重力測定に向けて着実に実験を進展させられたと考えられる。項目(1)により、変位計測の原理雑音の一種である熱雑音を十分に低減できた。さらに、懸架線を従来の1本から2本に変更することで、懸架鏡の回転方向(yaw)の共振周波数を十分に高めることができたため、項目(4)の共振器長の短い、つまり光源の周波数雑音に対して不感な共振器を実現できた。1本の懸架線の場合、光圧トルクによる不安定性を除去するために共振器形状を三角形にする必要があったため、共振器長は10cm程度までしか短くできなかった。二本線で懸架した新たなシステムでは、機械的な復元力が光圧トルクによる反復元力より大きいため、2枚の合わせ鏡からなる周回長の短い光共振器を安定化できる。項目(3)により、光源の雑音も十分に除去できた。周波数雑音に関してはインループ評価による雑音の推定結果ではあるものの、項目(4)によって、先行研究よりも5倍周波数雑音を低減できることは間違いない。項目(3)によって、新たな実験環境で観測された建物の固有振動(~1Hz)の影響を十分に除去できる見込みである。 よって、以上の4項目の達成により、微小重力の観測に向けて着実な装置開発を進めることができたと言える。
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