研究実績の概要 |
本提案では、“超高解像度、高速、高エネルギー分解能を可能にする共晶体シンチレータを開発し、光検出器と組み合わせることで超高解像度粒子・光子弁別イメージングを実現することを目的としている。本年度は、高発光量、高エネルギー分解能、高速なシンチレータファイバーを有する共晶体の開発を行うべく、以下の2点の検討を実施した。 (ⅰ) 状態図の未知なREI3-AEI2系の擬二元系状態図を作成 (ⅱ) REI3-AEI2系の共晶点組成/共晶点構造の調査 検討の結果、BaI2-REI3系の共晶体は、BaI2-GdI3, BaI2-YI3, BaI2-LuI3系ではREI3がロッド状となる共晶組織に、BaI2-CeI3,ではラメラー組織となることが明らかになった。すなわち、RE = Gd~Luの元素を選択した場合に、BaI2-REI3系の共晶体は、REI3がロッド形状となる共晶組織になると考えられ、光導波型共晶体シンチレータへと応用できる可能性がある。SrI2-REI3系およびCaI2-REI3系の共晶体では、全てのRE (= Ce, Gd, Y, Lu)でラメラー型となることが判明をした。すなわち、SrI2-REI3系およびCaI2-REI3系においては、どのRE (La~Lu)を選択したとしても、ラメラー型の共晶体結晶となることが示唆された。 また、BaI2-LuI3系において、実際にCe添加を行った共晶体シンチレータ育成を行い、特性表を実施したところ、ロッド相であるLuI3相の発光が確認され、光道波型共晶体シンチレータとして応用ができる可能性があることが判明した。検討結果は、シンチレータ特性に優れたハロゲン系シンチレータをロッド相とした光道波型共晶体シンチレータの実現を示唆する物であり、今後の大型化や検出器試作の道を切り開く画期的な成果となる。作製した小型あるいは大型の共晶体と光検出器との組み合わせによる検出器を試作し、α線、β線、中性子線、ガンマ線、X線等の密封線源を用いた粒子、光子の飛跡検出、弁別に関する原理実証までを実施する計画である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本提案では、“超高解像度、高速、高エネルギー分解能を可能にする共晶体シンチレータを開発し、光検出器と組み合わせることで超高解像度粒子・光子弁別イメージングを実現することを目的としている。本年度は、高発光量、高エネルギー分解能、高速なシンチレータファイバーを有する共晶体の開発を行うべく、状態図の未知なREI3-AEI2系の擬二元系状態図を作成し、BaI2-GdI3, BaI2-YI3, BaI2-LuI3系ではREI3がロッド状となる共晶組織を得た。また、BaI2-LuI3系において、実際にCe添加を行った共晶体シンチレータ育成を行い、特性表を実施したところ、ロッド相であるLuI3相の発光が確認され、光道波型共晶体シンチレータとして応用ができる可能性があることが判明した。以上の検討結果は、シンチレータ特性に優れたハロゲン系シンチレータをロッド相とした光道波型共晶体シンチレータの実現を示唆する物であり、今後の大型化や検出器試作の道を切り開く画期的な成果となる。開発の初期段階となる、新規共晶体組成の探索は順調に推移しているため、当該の区分を選択した。
|
今後の研究の推進方策 |
共晶体シンチレータの設計指針としては、ファイバー、マトリックス各相の体積比が、30%程度以下となる場合、共晶体構造が得られることが、これまでの研究により判明している。次年度の開発のターゲットとしては、引き続き本年度検討した以外の ファイバー相:Ce: ReB3(Re=La,Ce,Gd,Lu, B=Cl,Br,I) マトリックス相:AeB2 (Ae=Mg,Ca,Sr,Ba, B=Cl,Br,I)、AB(A=Li.Na.K.Rb, B=Cl,Br,I) を選択し、組成比、引き下げ速度、温度勾配といった共晶体作製条件を変化させ、共晶体を作製し、光学的に透明な共晶体構造が得られる作製条件を検討する。上記検討で確認された共晶体組成を基に、大口径化、大型化に向けた大型結晶育成の検討を行う。自己組織化ファイバー構造を安定的かつ大面積に得るためには、共晶体作製時の固液界面の平坦化、安定化および面内方向の温度勾配の均一化が重要となる。このため、共晶体作製に用いる、カーボンルツボ形状、ダイ形状、穴数、穴の配置や成長方向での温度勾配を最適化することで、固液界面形状の平坦化と構造安定化を達成する。さらに、作製した小型あるいは大型の共晶体と光検出器との組み合わせによる検出器を試作し、α線、β線、中性子線、ガンマ線、X線等の密封線源を用いた粒子、光子の飛跡検出、弁別に関する原理実証までを実施する。
|