研究課題/領域番号 |
19H00673
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研究機関 | 茨城大学 |
研究代表者 |
飯沼 裕美 茨城大学, 理工学研究科(理学野), 准教授 (60446515)
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研究分担者 |
大澤 哲 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 加速器研究施設, 研究員 (00150011)
古川 和朗 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 加速器研究施設, 教授 (00190132)
染谷 宏彦 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, その他部局等, シニアフェロー (10518830)
近藤 恭弘 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 J-PARCセンター, 主任研究員 (40354740)
山口 博史 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 研究員 (40717914) [辞退]
大谷 将士 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 加速器研究施設, 助教 (90636416)
佐々木 憲一 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 超伝導低温工学センター, 教授 (70322831)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ミューオンスピン歳差運動 / 強いX-Y相関ビーム / パルス磁場キッカー |
研究実績の概要 |
J-PARC MLFのミューオンビームラインに建設が進んでいる、素粒子ミューオンのスピン歳差運動の超精密測定実験(Muon g-2/EDM実験)の重要開発要素技術である、3次元螺旋ビーム入射に係るビーム輸送ライン系の開発に取り組んだ。直径70㎝程度の円軌道に相対論的エネルギーのミューオンビームを蓄積するためには、ビームの進行方向(Z方向)に対して垂直な平面(水平と鉛直方向)のビーム運動の結合の制御=X-Y結合がカギとなる。通常の加速器ビーム輸送ラインでは意図的に水平方向と鉛直方向の運動を分離し、独立な制御をおこなうが、軸対称磁場への入射は、双方向の運動が強い相関を持つために、本輸送ラインでは、強い相関を精密に制御する必要がある。このための回転4極磁石の試作機を作り、電子銃を用いたテストビームラインで動作確認を行った。その結果、所定のX-Y結合を与えることができ、理論計算による設計値と、実際のビームラインでのビーム運動の比較、評価を行い、理論計算の妥当性を確認できた。この結果を、2020年9月に行われた第17回日本加速器学会や、2021年5月に行われた国際会議IPAC21で報告している。 また、蓄積後の3次元螺旋軌道ビームを、弱収束磁場中の蓄積ボリュームにビームを保持するためのデバイスとして、パルス磁場キッカーの電源試作機の性能評価も行った。大電流パルスから発生する、パルス磁場により、ビーム運動量の向きを変える基本概念の実証を目的としているが、まずは、所定のパルス電流が出ていることを確認するためにテストベンチでの評価を行った。コロナ禍の影響で、電源メーカの専門員立ち合いによる実験作業の遅延もあったが、電源自体の性能は設計通りでり、磁場発生用の負荷(銅コイル)接続時のインダクタンス評価も順調に進めることができた。この成果は、2021年3月に行われた日本物理学会で報告している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
パルス磁場キッカーの単体動作確認は終えている。次は、電子銃ビームラインの最下流にある、ソレノイド型蓄積磁石内部に設置して、ビーム蓄積実験に移るのだが、2020年度末に再びコロナ禍による実験室活動自粛をせざるを得ない時期もあり、未だ、キッカー装置をシステムに組み込めていない。その代わり、3次元空間の磁場計算を詳細に行い、また、入射ビームのトラッキングツールのアップグレードに取り組み、キッカーデバイスの試運転のシナリオを詳細に決めるための予備計算をじっくりと進めることができた。実験室での作業としては若干遅延しているが、試運転に必要な予備計算を前倒しして進めたことで、現場作業の遅延の影響を最小限に抑えたと考える。
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今後の研究の推進方策 |
コロナ禍の影響を最小限に抑えるために、実験室現場でなくても行える作業(ビームシミュレーションの精度向上や、コイルインダクタンスの計算など)を十分に行い、最小限の準備時間で、3次元螺旋軌道入射実証のシステムを本格稼働させる。そして、本研究課題の一番の目標である、蓄積磁石内部のビーム運動の測定結果から、3次元入射後のビームが蓄積ボリュームの定常軌道に保持されていることを結論づけるに十分な実験証拠を得るための検出器の設計・製作に取り組む。パルスビームの強度が不十分であること、まだ磁場中での検出であるため、ビーム信号を光信号に変換し、ビームの位置検出精度の向上と、検出感度の向上の2点に取り組む、 また、蓄積槽内部に設置するステアリング磁石の初号機の製作は済んでいるので、ビームランにおける動作確認も随時計画していく。
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