研究課題/領域番号 |
19H00682
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
早坂 圭司 新潟大学, 自然科学系, 研究教授 (40377966)
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研究分担者 |
居波 賢二 名古屋大学, 理学研究科, 准教授 (50372529)
今野 智之 北里大学, 理学部, 助教 (60751518)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | タウレプトン |
研究実績の概要 |
令和元年度ではタウレプトン崩壊に現れるπ0→γγを利用してビームバックグラウンドを起因とする偽光子がモンテカルロシミュレーションで期待された量よりも実際ははるかに多いことを明らかにした。特に低エネルギー領域の光子候補はほとんど偽光子であることが明確になり、今後事象選別条件を決めるにあたって十分に注意していく必要があることがわかった。一方で光子のエネルギー分解能はシミュレーションでも十分に再現されていることも確認した。また、荷電粒子の運動量測定性能を確認するためにτ→πππν事象を用いてタウレプトン質量を測定する方法を確立し、信頼できる測定ができていることを確認した。十分な精度が出ているかを確認するためには今後さらなるデータ量の蓄積が必要となる。 レプトン識別の効率についても調べ、未だ十分な性能が出ていないことも明らかにした。特にミュー粒子の識別がよくないことがわかった。一方で電子識別はE/pという量を電子識別尤度の代わりに用いると効率よく識別できることも確認された。τ-CPV測定に必要となるKs0→ππ過程の再構成についても研究を進め高純度のKs0が抽出できる条件を決定した。 効率よくタウレプトン対事象をデータから抜き出してくる(スキム)ための一般的なタウレプトン対事象選別条件を決定した。 環境整備として、解析したデータの保存場所となるストレージシステムを購入しBelle II実験共通の計算機環境の混雑状況に左右されずデータ解析ができる環境を整えた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定どおりπ0を用いたBelle II実験で再構成された光子の性質の理解は進み、偽光子の分布状況なども把握できた。またタウレプトン質量の測定を通して、タウレプトン解析でよく現れる運動量領域の運動量再構成も信頼できるレベルであることを確認し、シミュレーションによる疑似データに現れるタウレプトン崩壊事象も大きな分岐比を持つ崩壊様式はデータをよく再現していることを見た。τ→Ks0πνにおけるCPVの測定の要となるKs0については、タウレプトン崩壊中のKs0を純度高く抽出するための選別条件も決定され、タウレプトン崩壊におけるCPV測定の準備も順調である。様々な素粒子過程が含まれるBelle II実験データからタウレプトン対を考慮よく抽出するためのスキムの方法も確立されデータ量が増えた時点で採用されることとなった。Belle II実験共通の計算機からは独立した計算機環境も順調に稼働しており効率的なデータ解析が進められることが確認できた。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画通り、Belle II実験で取得されたデータの理解と解析方法の確立を、光子の性質、粒子識別性能等のさらなる理解などを通して進めていく。本年度と同じく運動量はタウレプトン質量測定を使い、光子のエネルギーはπ0→γγ事象を用いる。e+e-→μ+μ-γ事象を測定するにはレプトン識別効率の評価が重要なので、2光子過程を用いたレプトン識別性能の評価にも着手する。一方でデータ取得の遅れが目立ち始めているので、代替手段として先行実験であるBelle実験のデータを利用したBelle IIデータの評価方法の確立や、Belle実験のデータ解析にも着手していくこととする。来年度より専任の特任助教を雇用し、さらなる研究の発展を目指す。
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