研究実績の概要 |
本研究では、世界的にも珍しい日本海沿岸の冬季雷や冬季雷雲に着目し、それらの雷活動に伴う放射線の信号の観測と、理論モデルの構築を電波、可視光、X線、ガンマ線までの多波長観測データに基づいて行う。もともと別分野として活動してきた、高エネルギー物理学、大気科学、気象学などの分野を融合させ、「高エネルギー大気物理学」という新しい分野の創出を狙うものである。2019年度は、放射線測定器の開発を進め、シチズンサイエンスの枠組みを活用できるような可搬型で操作の簡単なモニタリング観測用の放射線測定器(カミナリ百葉箱)の大量生産の目処がたった。また、これまでに蓄積された観測データの解析をすすめ、柏崎刈羽原子力発電所内で観測された地球ガンマ線(Terrestial Gamma-ray Flash)で電子の加速領域の高度やアバランシェ増幅された電子の量の推定を行い論文にまとめた(Wada, Enoto, et al. "Downward Terrestrial Gamma-Ray Flash Observed in a Winter Thunderstorm", Physical Review Letters, Volume 123, Issue 6, id.061103)。また、金沢の2つの高校に設置した観測装置により、雷雲からのガンマ線が雷放電に伴って消失し、光核反応が起きるという現象を観測、解析し、論文にまとめた(Wada, Enoto, et al., "Gamma-ray glow preceding downward terrestrial gamma-ray flash", Communications Physics, Volume 2, Issue 1, id.67)。後者はプレスリリースを行った。電波や電場の測定準備も進めている。
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