研究課題
本研究では、宇宙暗黒物質探索に深刻な影響を与える検出器内部の放射性不純物を除去することに取り組んだ。その結果、世界最高純度のタリウム添加ヨウ化ナトリウム(NaI(Tl))結晶の開発に成功した。代表者らのグループがこれまで作ってきたNaI(Tl)結晶には、1000 μBq/kg程度の210Pbおよび3000 μBq/kg程度の40Kが含まれており、宇宙暗黒物質に対する感度を劣化させていた。代表者らはこれまで実施してきた原料の純化方法を検討し、二種類の効果的な除去方法の最適な組み合わせを見いだした。その結果、NaI(Tl)結晶に含まれる放射性不純物について、210Pbおよび40Kともに検出限界の数μBq/kg以下を達成した。実験方法について:純化したNaI(Tl)結晶をNaI(Tl)検出器として組み立て、徳島大学理工学部の実験室で測定した。信号波形弁別によって、アルファ線とガンマ線の信号を弁別し、NaI(Tl)結晶内部で発生するアルファ線の数を測定した。その結果、明瞭なピークは観測されず、NaI(Tl)に含まれる放射性不純物の濃度は210Pbについて5.7 μBq/kg以下の高純度を達成した。引き続き、結晶純化の再現性を確認するため、同じ方法で純化を行なったNaI(Tl)検出器をもう一つ製造して純度を測定した。前述の結晶と新しい結晶をそれぞれ岐阜県飛騨市の東北大学ニュートリノ科学研究センター神岡地下観測所に設置してバックグラウンドを測定した。その結果、新しい結晶についても同様の高純度を確認し、純化方法の再現性を確認した。
3: やや遅れている
コロナウイルスの蔓延に伴う材料供給の遅れ、出張制限により、十分な準備ができなかったため。
再現性の確認が必須項目である。現時点では2回の試行で再現性を確認してきた。さらに高純度を達成することをめざして純化方法の改善を試みる。複数のNaI(Tl)検出器を岐阜県飛騨市の東北大学ニュートリノ科学研究センター神岡地下観測所に設置し、低バックグラウンド測定を行ない、宇宙暗黒物質探索の結果を解析して論文を執筆する。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 3件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (5件) (うち招待講演 2件) 図書 (1件) 備考 (1件)
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https://www-phys.st.tokushima-u.ac.jp/project/index.php?id=1