研究課題
前年度の繰り越し経費によって整備した高純度タリウム添加ヨウ化ナトリウム(NaI(Tl)と略記する)を、岐阜県飛騨市の神岡地下実験室に設置し、長期間計測を開始した。2021年7月にこれまで作成したNaI(Tl)検出器を地下実験室内の放射線遮蔽体の中に設置し、個別のバックグラウンドおよび複数の装置を組み合わせたバックグラウンドの両方を取得した。遮蔽体は厚さ5 cmの無酸素銅と厚さ20 cmの高純度鉛を使用し、岩盤からのガンマ線を遮蔽している。遮蔽体内部には、純粋窒素ガスを注入し、放射性ラドンによるバックグラウンドを低減させている。単体の検出器によるバックグラウンド測定によって、10 keV以下のエネ領域で2 /day/keV/kgというバックグラウンドレベルを達成した。この計数率は、DAMA/LIBRAの2倍となっており、韓国のCOSINE-100と同等以下の低バックグラウンドレベルである。なお、今回の測定では、NaI(Tl)検出器単体による結果であり、複数のモジュールによる反同時計数でバックグラウンドを低減させている他グループにくらべて条件が悪い中でこのようなバックグラウンドレベルを達成させたことは特筆に値する。これまでの研究成果を、国際研究集会TAUP2021および日本物理学会等で、それぞれ口頭発表によって報告し、高純度化が成功している状況について大きな反響を得ている。さらに、共同研究者にらによるポスター発表により研究成果を報告している。
2: おおむね順調に進展している
前年度までの研究で、開発に成功した超高純度タリウム添加ヨウ化ナトリウム[NaI(Tl)と略記する]結晶を用いてバックグラウンドを調査した。このバックグラウンド測定によって、宇宙暗黒物質探索に対する感度を評価した。昨年度の予算で作成したNaI(Tl)検出器を、岐阜県飛騨市の神岡地下実験室に設置し、厚さ5 cmの無酸素銅および厚さ20 cmの高純度鉛遮蔽体で外部からのガンマ線を遮蔽した状態でバックグラウンドを測定し、純度の確認をおこなった。その結果、NaI(Tl)結晶に含まれる放射性不純物の濃度は宇宙暗黒物質探索に十分な高純度であることを確認した。同時に長期間測定を実行し、データの安定性について確認を行っている。2022年1月より2個のNaI(Tl)検出器モジュールを遮蔽体に設置し、反同時計数によるバックグラウンドの低減効果および長期間の安定したデータ収集を確認中である。
NaI(Tl)検出器を用いた宇宙暗黒物質探索では、DAMA/LIBRAが主張する季節変化の有無を確認することが重要である。そのためには実験データの蓄積と長期間安定性を確認することが必要である。次年度には、実験データの長期間安定性を確認するとともに、実験装置の近くに温度・湿度・気圧モニターなどの環境モニターを設置し、環境要因によるデータの変動を確認する予定である。
すべて 2022 2021 その他
すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (11件) (うち国際学会 2件) 備考 (1件)
Physical Review D
巻: 103 ページ: 092008-1~13
10.1103/PhysRevD.103.092008
https://www-phys.st.tokushima-u.ac.jp/project/index.php?id=1