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2020 年度 実績報告書

J-PARCパルス中性子ビームを用いた中性子寿命測定:中性子寿命問題の解明

研究課題

研究課題/領域番号 19H00690
研究機関大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構

研究代表者

三島 賢二  大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 物質構造科学研究所, 特別准教授 (20392136)

研究分担者 関場 大一郎  筑波大学, 数理物質系, 講師 (20396807)
吉岡 瑞樹  九州大学, 先端素粒子物理研究センター, 准教授 (20401317)
山下 了  東京大学, 素粒子物理国際研究センター, 特任教授 (60272465)
角野 浩史  東京大学, 大学院総合文化研究科, 准教授 (90332593)
北口 雅暁  名古屋大学, 素粒子宇宙起源研究所, 准教授 (90397571)
研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2022-03-31
キーワード中性子寿命 / 中性子崩壊 / ビッグバン元素合成 / CKM行列
研究実績の概要

中性子の寿命はビッグバン元素合成を知る上での重要なパラメーターである。中性子寿命の測定法には、中性子数と単位時間当たりの崩壊数を数えるビーム法と超冷中性子を蓄積してその崩壊時間を測定する蓄積法の2種類が存在するが、それぞれの値が9.5秒(4.6σ)ずれておりその原因の特定は喫緊の問題となっている。本実験はこの問題を解決すべく既存の実験とは異なる手法によって中性子寿命の精密測定を測定を行うものである。2021年度までの進捗を以下にまとめる。
1) データ解析 : 中性子寿命の物理測定は2014年から開始した。解析コードやシミュレーションの高度化を行い、この実験の最初の物理結果を論文に出版した( K. Hirota et al., Prog. Theor. Exp. Phys. (2020) 123C02)。得られた中性子寿命の値は 898 ± 10(stat.)+15/-18 (sys.)秒であり、ビーム法、蓄積法の双方と無矛盾な値であった。
2) スピンフリップチョッパー(SFC)の大型化 : 本実験では長さ1 mのガス検出器に40 cm長に整形した中性子バンチを導入し、中性子バンチが完全にTPC内に存在する時のみ計数をする。統計誤差の向上、また系統誤差研究のためにはより高強度の中性子が必要であるが、中性子強度は中性子輸送に用いているSFCの大きさにより制限されていた。そこで従来よりも大型のSFCを設計、作成しビームラインにインストールし、結果今までの3.2倍のビーム強度増強に成功した。
3) データ取得 : 改良したSFCを用い、高い統計精度でデータを取得した。過去のデータと合わせて約3秒を切るデータが得られている。データは系統誤差評価を含め、現在解析中である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

大型SFCは2020年に完成していたが、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響により、そのビームラインへのインストール作業が2021年にずれ込んだ。また、大型SFCからのバックグラウンドが想定よりも多く、追加の遮蔽が必要になった。追加遮蔽を導入後は想定通りに進捗している。

今後の研究の推進方策

現在2021年度までに取得したデータの解析を進めている。これは統計精度約3秒に相当にする。2022年にさらに追加の測定を行い2秒を切るデータを取得する予定である。現在の系統誤差の主因は散乱中性子起因のバックグラウンドによるものである。これはTPC動作ガスで散乱した中性子がTPC壁面に吸収されたときに発生するガンマ線によるものと推測されているが、このバックグラウンドが計算で予想された量の4倍程度が観測されており、この評価に大きな系統誤差がついている。TPC壁材に実際に中性子を照射し、そこからのガンマ線を実測することでこのバックグラウンドを正確に評価し、系統誤差を低減する計画である。

  • 研究成果

    (14件)

すべて 2022 2021

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (12件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件)

  • [雑誌論文] Improvement of systematic uncertainties for the neutron lifetime experiment at J-PARC2022

    • 著者名/発表者名
      Mogi Takanori et al.,
    • 雑誌名

      Proceedings of Particles and Nuclei International Conference 2021, PoS(PANIC2021)

      巻: PANIC2021 ページ: 458

    • DOI

      10.22323/1.380.0458

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Neutron lifetime experiment with pulsed cold neutrons at J-PARC2022

    • 著者名/発表者名
      Ichikawa Go et al.,
    • 雑誌名

      Proceedings of Particles and Nuclei International Conference 2021, PoS(PANIC2021)

      巻: PANIC2021 ページ: 457

    • DOI

      10.22323/1.380.0457

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] J-PARC/BL05における中性子寿命測定実験:角相関項測定に向けたHe3スピンフィルターを用いた中性子偏極率測定2022

    • 著者名/発表者名
      長谷川 拓郎
    • 学会等名
      日本物理学会 2021年秋季大会
  • [学会発表] J-PARC/BL05における中性子寿命測定実験:背景事象低減のための中性子入射コリメーターの導入と物理ランの現状2022

    • 著者名/発表者名
      市川 豪
    • 学会等名
      日本物理学会 第77回年次大会
  • [学会発表] J-PARC/BL05における中性子寿命測定実験:2021年の測定データによる解析の現状2022

    • 著者名/発表者名
      松崎 俊
    • 学会等名
      日本物理学会 第77回年次大会
  • [学会発表] J-PARC/BL05における中性子寿命測定実験:中性子寿命精密測定における背景事象の削減2022

    • 著者名/発表者名
      細川 律也
    • 学会等名
      日本物理学会 第77回年次大会
  • [学会発表] J-PARCパルス中性子源を用いた希ガスの中性子に対する吸収断面積の精密測定2022

    • 著者名/発表者名
      清水 春樹
    • 学会等名
      日本物理学会 第77回年次大会
  • [学会発表] Fundamental physics using neutrons at J-PARC2021

    • 著者名/発表者名
      Kenji Mishima on behalf of the NOP collaboration
    • 学会等名
      Fundamental physics using atoms (FPUA2021 & FPUNA)
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] ソレノイド磁石を用いた中性子寿命測定ための多層TPCの開発2021

    • 著者名/発表者名
      松崎 俊
    • 学会等名
      日本物理学会 2021年秋季大会
  • [学会発表] J-PARCにおけるパルス中性子源の波長-飛行時間相関の詳細測定2021

    • 著者名/発表者名
      清水 春樹
    • 学会等名
      日本物理学会 2021年秋季大会
  • [学会発表] J-PARC/BL05における中性子寿命測定実験:大型中性子光学系の導入と高統計物理ランの現状2021

    • 著者名/発表者名
      市川 豪
    • 学会等名
      日本物理学会 2021年秋季大会
  • [学会発表] J-PARC/BL05における中性子寿命測定実験:ガス散乱起因背景事象低減に向けた低ガス圧測定の解析2021

    • 著者名/発表者名
      茂木 駿紀
    • 学会等名
      日本物理学会 2021年秋季大会
  • [学会発表] J-PARCにおけるパルス中性子源の波長-飛行時間相関の詳細測定2021

    • 著者名/発表者名
      清水 春樹
    • 学会等名
      第21回日本中性子科学会年会
  • [学会発表] J-PARC/BL05における中性子寿命測定実験: 大型中性子輸送光学系の導入と3Heスピンフィルターを用いた偏極率測定2021

    • 著者名/発表者名
      長谷川 拓郎
    • 学会等名
      第21回日本中性子科学会年会

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公開日: 2022-12-28  

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