研究課題/領域番号 |
19H00692
|
研究機関 | 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構 |
研究代表者 |
坪山 透 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, その他部局等, シニアフェロー (80188622)
|
研究分担者 |
山田 美帆 東京都立産業技術高等専門学校, ものづくり工学科, 助教 (90714668)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 素粒子センサー / 3次元積層 / ピクセルセンサー / バーテックス検出器 / SOI CMOSデバイス |
研究実績の概要 |
本研究は2019年に開始した。2019年度はBelle upgradeに必要なピクセルセンサーのシミュレーションをおこない、基本仕様を決定した。また、加速器からのバッっくグラウンドの評価を行、ピクセルセンサーに必要な回路の基本設計とパラメターを決めた。一方、ピクセルセンサー回路の3次元積層を実施し性能評価行った。2020年度にはこれらに基づきピクセルセンサーDuTiPの設計製造を行った。 2021年度は研究全体計画の中で、大型センサーを設計製造し、最終年度である2022年度の評価の準備を行うこととなっている。そのために(1)2020年度に製造した DuTiP ピクセルセンサーの評価を開始し、当該チップが全体的に設計通りに動作することを確認した。詳細の評価は現在も進行中である。 その評価に並行して、放射線照射・チップの薄化などを行い、最終的に使用する環境での性能を評価する準備を行った。(3)大型ピクセルセンサーDuTiP2に必要な機能の仕様を決定し設計を行い、2021年11月に製造を開始した。製造したチップは2022年3月にKEKに納品された。一方、設計したDuTiP2のデザインに基づき評価システムの準備を開始した。(4)2021年度年は社会的状況に加え、DuTiP2の設計と製造開始が活動の中心であったため、国際学会等での発表は行えなかったが、いくつかの国際ワークショップでの議論に参加することで情報の収集を行った。(5) 将来の素粒子実験での応用に向けSnowmass white paper にDuTiP を応用するよう提案した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は4年次で実施するもので、本年度はその3年目である。初年度に基礎デザインのパラメータを決定し、2年目にはDuTiP1を実際に設計/製造した。本年度はその評価を開始したところ、基本的な動作を確認することができた。詳細な評価は継続中だが、大型センサーDuTiP2の設計の開始が可能となった。 DuTiP2の製造開始後はセンサーの3次元的な構造を反映した電子回路シミュレーションを用いて動作検証を行い、3月末までに評価上の試験方法にいくつかの提案があったが、問題は発生していない。 DuTiP2は測定器に組みこむ実用センサーの1/4程度の大きさだが、検出器の幅は実用センサーと同じにしてあるので、実用センサーで起こり得る問題が顕著になる。また、実用センサーに必要な周辺回路機能であるDAC/LVDS回路など組み込んだため、その評価を通じてチップ自身のパフォーマンスの推定が可能である。DuTiP2を本年度製造できたので、来年度に予定される評価やビーム試験を行うことが可能である。 こうしたことから、本年度の当初の研究計画の目標が達成されたと言える。来年度はそのピクセルセンサーの評価を行い、Belle実験で用いるピクセルセンサーのデザイン準備を行うことが可能である。
|
今後の研究の推進方策 |
2022年度は本研究の最終年度である。DuTiP2チップの評価を通じて、DuTiP方式のピクセルセンサーの妥当性を評価することになる。評価には(a)実験室の机上試験装置による基礎性能の確認 (b) 動作速度を含む素粒子測定システムとの整合性 (c)放射線耐性がある。さらに粒子ビームを用いることで詳細な評価が可能である。 これらの評価の結果に基づきDuTiP方式の総合的な評価を行い、実験組み込み用の実用ピクセルセンサーの製造に向けたデザインを行う、一方、評価において改造ずべき問題が見られた場合は(1)変更が些細な場合はDuTiP1または DuTiP2のマスクの一部を変更して、試験センサーの製造を再度行う。この場合、費用/時間とも本科研費研究機関で修了することが可能である。評価に関しては本科研費機関中に修了しない可能性があるが、センサー・機材は揃っており、科研費研究期間後に評価を継続する。その結果に基づき、実用センサー設計に向けた改善方法を確立する。
|