研究課題/領域番号 |
19H00696
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
郡司 修一 山形大学, 理学部, 教授 (70241685)
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研究分担者 |
水野 恒史 広島大学, 宇宙科学センター, 准教授 (20403579)
林田 清 大阪大学, 理学研究科, 准教授 (30222227) [辞退]
北口 貴雄 国立研究開発法人理化学研究所, 開拓研究本部, 研究員 (30620679)
三石 郁之 名古屋大学, 理学研究科, 講師 (90725863)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 偏光X線 / IXPE衛星 / かに星雲 / ガンマ線バースト / ブラックホール |
研究実績の概要 |
X線天文学では、エネルギースペクトルの観測、放射のタイミング観測、撮像観測から得られる3つの情報を利用して、天体で生じる高エネルギー現象を解明してきた。しかしながら、もう一つ偏光という重要な情報があるが、X線の偏光観測が技術的に難しかった事から、観測結果がほぼ無く、利用もされてこなかった。しかし2021年12月に打ち上がったIXPE衛星は、エネルギー、時間、イメージと同時に偏光も取得できる世界初の衛星であり、今後出てくるデータによって偏光観測がどのような物理を明らかにするのか、他の3つの情報と組み合わせることでどのようなシナジーを生むのか明らかになる。そこで打ち上げ前に我々は、IXPE衛星によって観測予定の天体に関して様々なシミュレーションを行って、その物理的意義を調べた。特に以下が今年度の実績になる。1)ガンマ線バーストからのX線残光がどの程度偏光していれば有為に検出できるのか、そしてそのようなガンマ線バーストが何年に1度起こるのかを明らかにした。またSWIFT衛星などから来る速報を自動で処理し、観測可能性を判断するシステムを構築した。2)超新星残骸の磁場構造を明らかにするには十分なイメージング性能が必要とされるが、IXPEの場合その角度分解能は25秒角程度であり必ずしも十分ではない。そこで、Chandra衛星のデータを利用して、より高分解能の偏光マップを作れる様な方法を開拓した。3)ブラックホールの降着円盤からは、ブラックホールのスピンやその円盤の見込み角に従って、偏光したX線が観測される事が予言されている。様々な理論モデルを利用して、ブラックホールのスピンの情報を引き出す方法を確立する作業を進めている。またIXPEの打ち上げ後は、天体のデータ解析を通じて、検出器の動作確認に参加している。またかに星雲のデータに関してはその初期的な解析を開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コロナの影響もあり、IXPE衛星の打ち上げは1年弱遅れたが、無事2021年12月に打ち上げられた。また打ち上げ後、コミッショニングを行い、検出器が正常に動いていることが確認されたため、現在予定していた天体の観測を順次行っている。以上の様にプロジェクト全体は非常に順調に進んでいる。実際の科学観測が始まったのが2022年1月であり、データの補正作業などを終えてからデータが公開されるのに1ヶ月はかかるため、実際の科学観測データの解析を日本グループが開始したのは2022年3月程度であるため、まだ科学観測の成果は発表できていない。しかし検出器によって取られたデータの補正作業などは順調に進んでおり、すでに幾つかの天体に関してはデータの一般公開も行われているため、概ね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度は取得された天体のデータ解析を主に行う年になる。特に我々のグループは、かに星雲を始めとする超新星残骸の解析を行う予定であり、かに星雲に関しては現在(2022年5月)解析中である。一般的に解析はIXPEグループの中の一部のメンバーによって行われるが、かに星雲は山形大、広島大、理研が解析を行っている。今後ベラパルサーやPSR1509-58等のパルサーウインドネビュラのデータが出てくる予定だが、それらの解析に対しても我々が大きな貢献をする予定である。また2022年5月に観測されたブラックホール天体であるCyg X-1のデータ解析は広島大学が、10月に観測されるブラックホール候補天体であるGRS1915+105は山形大が貢献する予定である。以上の様に2022年度は、解析を速やかに行いその物理的な成果を出す事が目標となる。
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