研究課題
2019年に不採択となった宇宙研小規模プロジェクトでは、6Uサイズバスを採用した場合の寸法制約や熱設計の困難さについて技術的成立性についての懸念が指摘された。そこで2020年の申請では50kgクラスの衛星バスを採用することで、これらの指摘に対応することとした。東工大は2014年に50kgクラス衛星「TSUBAME」を打ち上げているが、軌道上実証には至っておらず、50kgバスは事実上の新規設計と言って良い。そこで、基本構成は東工大工学院機械系松永研究室が技術実証衛星として開発している「HIBARI」をベースとし、ここから工学実験要素を省き、天文観測に必要な機能を持たせた。具体的には、高精度な姿勢制御を実現するための3機のリアクションホイールと、大容量のデータレコーダ、画像データを地上へ転送するためにXバンド送信機を新たに採用した。また、消費電力がHIBARIのおよそ2倍となったため、2翼の展開式太陽電池パドルを採用した。この概念検討に基づく衛星開発計画を宇宙研小規模プロジェクトとして提案し、フライトモデルの開発費を獲得した。一方、この予算は打ち上げ費用は含まれないため、別途JAXAの革新的衛星技術実証3号機への搭載を提案した。革新的衛星技術実証事業はJAXAによる宇宙産業の促進を目的としており、将来の事業化計画が求められていたため、紫外観測を行わない昼の時間をビジネス応用するという産学連携コンソーシアムを立ち上げることにより採択された。このプログラムによる打上フライトは2022年10月のイプシロン6号機が予定された。
1: 当初の計画以上に進展している
衛星設計については、衛星バスのサイズを6Uキューブサットから50kgクラスのマイクロ衛星に変更するという大きな変更を行った。電装系についてはHIBARI衛星がプロトタイプとなっており、この基本設計を完了し、実機の動作確認や通信確認等の試験を完了した。マネジメント計画として、もともと6Uキューブサットを目指した理由は、高頻度かつ低コストなフライトチャンスを獲得できることであったが、2020年時点においては、国内では6Uサイズの需要が認知されておらず、そもそも打ち上げ枠が存在していなかった。また、1機あたりの打ち上げコストは3000~5000万円程度、しかもその多くはISSからの放出であったため、軌道寿命は1年程度と、十分な観測期間を得ることも困難と考えられた。一方の50kgクラス衛星については、実際に開発能力のある組織が国内では数えるほどしかないのが現状であり、たとえ2年に3枠程度の頻度であったとしても、我々開発チームとしてのフライト枠獲得チャンスという観点では50kgの方が期待値が高かった。このような推測に基づいて、実際にイプシロンロケットのフライト枠を獲得し、8月には宇宙研小規模ミッションとして開発費を獲得するなど、実際のフライトへ向けて最も高い障壁を2つともパスすることができた。
フライトが決まり、ロケットインターフェースが確定したため、はじめて衛星バスの機械設計や実際の搭載装置の環境試験などを進めることができるようになった。次年度では、2020年度の検討結果をベースとして実機設計を行い、実際のフライトモデルの設計を進める。また、これと並行してプロトタイプであるHIBARI衛星のフライトオペレーションを行うことで、紫外線観測衛星の運用シーケンス等を具体化し、フライトソフトウェアの設計や地上局の調整などを実施する。
すべて 2021 2020 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (2件) 学会発表 (8件) (うち国際学会 2件、 招待講演 2件) 備考 (1件)
Proc. IEEE Nuclear Science Symposium and Medical Imaging Conference 2021
巻: - ページ: 1~2
10.1117/12.2560605
Proc. SPIE 11449, Observatory Operations: Strategies, Processes, and Systems VIII
巻: 11449 ページ: 114491Z
10.1117/12.2561258
http://www.hp.phys.titech.ac.jp/umitsubame/index2.html