衛星バスの設計開発を進めてきたが、本プロジェクトの技術障壁の一つが放熱板を用いた紫外線観測センサの冷却であった。2021年度には機能検証のために望遠鏡と放熱板だけの供試体で簡易実験を行ったが、本年度は実際の衛星と同じ熱・光学特性を有する熱・構造モデルに紫外線望遠鏡のフライトモデルを搭載して、実際にデータを取得している状態でセンサ温度を-20°C以下に維持できること確認することとした。実験は帝京大学の熱真空試験環境装置で実施した。この結果、センサ基板とセンサ制御回路間を繋ぐフレキシブルケーブルからの熱流入があり、衛星本体からの熱がここを介して放熱板に流れていることが判明した。そこで、フレキシブルケーブルを長いものに変更することで熱伝導を低下させ、センサの温度を下げようと試みた。また、衛星バス側では衛星の生命線である電池ユニット取付部の熱環境を確定し、熱計装を確定した。 電装系については、HIBARIの設計を踏襲したものの、すべてがカスタム設計であったためメンテナンス性に課題があった。そこで紫外線衛星では、これらを可能な限り共通設計として機能ごとに分割するとともに、キューブサットにも搭載可能な90mm×90mm角サイズに収め、全て電気メーカーに設計・製造を委託した。これにより、同一の電子回路セットを、姿勢制御系、CDH系、電源系、ミッション系に用いることができ、ハードウェアの設計・製造・デバッグにかかる開発コストを大幅に抑制することに成功した。すでにそれぞれにプログラムを実装して、電気統合試験を完了した。 本来、2023年度中に打ち上げられる予定であったが、ロケット事業者側のロケット選定が難航したために、5月の打上げはキャンセルとなった。報告書執筆時点での最新のフライトスケジュールは2023年11月末であり、これに向けてフライトモデルの最終組み上げ、環境試験等を進める予定である。
|