研究課題
本研究は、将来の極低温宇宙望遠鏡において、中間赤外線での太陽系外惑星の食分光を実施するために、瞳収縮分光の外乱への安定性を評価するものである。2020年度は、観測環境の外乱を模擬するために、指向誤差を瞳収縮分光器に導入する望遠鏡シミュレーターを完成させた。また、望遠鏡シミュレーターは、単に指向擾乱を与えるだけでなく、光源の明るさを2台の独立なフォトダイオードによって精密に測光する機能を備えた。望遠鏡シミュレーターは、NASA Ames Research Centerで用意された大型の極低温容器に入るように、また瞳収縮分光器と構造的に、光学的に結合するように製作された。望遠鏡シミュレーターを単独で動作させ、指向擾乱を正しく導入できることを実験的に確認した。これらの結果を国際光学会で発表し、その結果を予稿としてまとめた。また、本研究の発展として、中間赤外線の高分散分光によって食を起こさない太陽系外惑星に対しても二酸化炭素やオゾンなどの分子種を測定できることを示した。これは、食中の明るさの変化を測定するものではなく、惑星のドップラーシフトによって生じるスペクトルの変化を調べるものである。本研究を査読論文としてまとめて、発表した。本研究は、単純な波長分解能の向上だけでなく、分光器の安定性も要求される。そこで、本分光器の有する安定性を活かしつつ、高分散化させることで、中間赤外線領域での地球型惑星の大気分光の新たなアプローチを開拓することが可能となる。この研究がきっかけとなり、瞳収縮分光器の高分散化を目指した技術検討が開始された。以上のように、従来の研究計画を実施しつつ、並行して本研究の新たな展開を開拓した。
3: やや遅れている
従来の計画では、2020年度に望遠鏡シミュレーターを完成させて、それをNASA Ames Research Centerにある瞳収縮分光器に取り付けて評価する予定であった。しかし、COVID-19の影響により、先方の実験施設がほぼ1年にわたって閉鎖し(正確には、全職員数の数分の1以下に入構する人数を抑えた)、外乱に対する瞳収縮分光器の安定性を評価することができなかった。
望遠鏡シミュレーターは完成したことを日本で確認したので、実験施設が再開されるのを待って、2021年度にNASA Ames Research Centerにある瞳収縮分光器に取り付けて、2020年度に計画した内容を実施する。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件) 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件)
Astronomical Journal
巻: 161 ページ: 14 pp
10.3847/1538-3881/abe129
巻: 161 ページ: 19 pp
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Proceedings of the SPIE
巻: 11443 ページ: 8 pp
10.1117/12.2560421