研究課題/領域番号 |
19H00701
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研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
田沼 肇 首都大学東京, 理学研究科, 教授 (30244411)
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研究分担者 |
飯田 進平 首都大学東京, 理学研究科, 助教 (20806963)
中村 信行 電気通信大学, レーザー新世代研究センター, 教授 (50361837)
坂上 裕之 核融合科学研究所, ヘリカル研究部, 助教 (40250112)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | イオンビーム / 高周波プラズマ / 質量分析 |
研究実績の概要 |
2018年度の研究計画調書提出時には,高周波を用いた線形イオントラップと電子ビームイオントラップを組み合わせた新しい多価イオントラップを開発する予定であった。しかし,新たに参加してもらった分担者との議論を繰り返している中で,小型で多価イオン生成能力の低い電子ビームイオントラップを新規に開発するより,多価イオン生成と磁場による閉じ込め性能が遙かに優れた大型装置を用いた方が良いという結論に達した。電気通信大学には世界最高性能を誇る大型の電子ビームイオントラップが建設されて順調に稼働しているので,この装置を使用することにした。 以上の変更を踏まえて,今年度の主な目的である高速中性水素原子ビーム入射装置の開発に着手した。この装置では水素イオンビームを中性化することで中性水素原子ビームを得るので,まずは大強度イオンビーム源が必要になる。当初の計画では,東京都立大学で稼働している電子サイクロトロン共鳴型イオン源を用いることになっていたが,計画を変更したために新たな小型イオン源が必要になった。測定に必要な直径1 mmで電流1 mAの大強度イオンビームを生成するには高周波プラズマ型のイオン源が適している。調査の結果,市販の小型マイクロ波イオン源を候補としたが,水素プラズマでは分子イオンも同時に生成されるため,装置メーカーの協力を得てイオンビームの質量分析測定を行った。その結果,低圧プラズマではほぼ100%が水素原子ビームであることが確認できたため,購入を決定した。イオン源が決定してから,質量分析器と中性化ガスセルを備えた真空チェンバーの設計に着手し,製作を開始した。本来であれば2020年3月にテスト実験が可能になる予定であったが,COVID-19の影響があって年度末の実験は延期せざると得なくなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
計画変更によって新規小型イオン源の導入が必要になり,その選定のために市販品の性能評価テスト実験を行うことになった。但し,装置メーカーとの日程調整が必要であったため,計画以上に日数を要した。イオン源が決定しないと,それ以外の部分の設計ができないため,全体的なスケジュールに遅れが生じてしまった。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度内に小型イオン源を組み込んだ高速水素原子ビーム入射装置の開発を完了させる。装置設計は既に完了しているので,原子ビーム生成までには時間は余りかからないと考えているが,このビームを入射する電子ビームイオントラップが非常に高真空に保たれているため,圧力の高い中性化用ガスセルとの間に6桁程度の圧力差がある。その圧力差を解消するために,最低でも2段の差動排気が必要である。この差動排気システムを設計製作して,年度内には装置開発を完了させて,電気通信大学へと装置を移設する予定である。一方の電気通信大学では,分担者が中心になってこの装置を取り付けるために現在の装置を一部解体して,準備を進めておく。また,発光スペクトルの観測のためには,電気通信大学で現在稼働している数種類の分光計測装置も使用できる見込みであるが,X線検出強度の面では不安もある。そこで当初から導入を予定していた大検出面を持ったシリコンドリフト型検出器を購入する。
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