研究課題/領域番号 |
19H00704
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研究機関 | 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構 |
研究代表者 |
山口 弘悦 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 宇宙科学研究所, 准教授 (00513467)
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研究分担者 |
辻本 匡弘 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 宇宙科学研究所, 准教授 (10528178)
山崎 典子 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 宇宙科学研究所, 教授 (20254146)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | X線天文学 / プラズマ物理学 |
研究実績の概要 |
Ia型超新星は「宇宙の標準光源」として宇宙論の研究においても重要な役割を持ちながら、未だその起源は解明されていない。本研究ではIa型超新星残骸の鉄族元素量をX線観測によって精密測定し、親星の最終質量と中心密度、さらには連星系の進化過程を高精度で決定する。これを実現するため、世界初となる「内殻過程の測定に特化した地上プラズマ実験」を行い、元素量決定に不可欠な原子データを収集する。 2019年度には、上記の実験に必要となる小型の電子ビームイオントラップ(EBIT)を、ドイツのマックスプランク核物理学研究所(MPIK)と共同で製作した。装置製作の効率化・低コスト化のため、開発に関わる経費のうち材料費相当分を研究代表者側が一括負担する有償共同研究契約をJAXA-MPIK間で締結し、これに基づいた資材調達および装置製作を予定通り遂行した。2019年に研究代表者が招待された3件の研究会にて本研究の現況を報告した。 理化学研究所との共同研究を新規に開始し、本計画の最終年度にSPring-8で行う内殻過程測定の実験計画を具体化した。 チャンドラセカール質量Ia型超新星残骸の最有力候補である「3C397」をXMM-Newton衛星およびNuSTAR衛星で観測し、強い鉄族元素輝線を含む高統計のX線スペクトルを取得した。2020年2月に研究代表者が招待された研究会にてpreliminaryな解析結果を報告した他、大学院生を主著者とする論文として成果報告の準備を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本計画では科研費を利用した有償共同研究契約を海外機関(MPIK)との間で締結する必要があり、年度前半は機関間の事務調整など研究以外の部分でやや手間取ったが、並行して装置(EBIT)の仕様に関する事前検討を入念に行ったことで作業の効率化に成功し、最終的には予定よりも早く開発が進んだ。イオンチェンバや電子銃の製作を年次計画通りに遂行した他、高圧電源等の準備も進めている。また、当初は2020年度中に進める予定であった国内放射光施設のビームタイム確保にも早々に目処が立った。XMM-NewtonとNuSTARによる超新星残骸3C397の観測も予定通り完了し、必要十分なデータが取得できたことを確認済みである。 一方、当初は本年度中に専任の博士研究員を雇用する予定であったが、充足率70%での採択となったため資金不足となり、断念せざるを得なかった。本研究は趣旨の一つとして若手の育成を掲げており、予定通りに実現できなかったことは大変悔やまれる。但しこの問題に関しては、次項「今後の研究の推進方策」で述べるように補填プランを確立できており、2020年度以降の研究は当初の計画に近い形で進める予定である。
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今後の研究の推進方策 |
前項で述べた通り博士研究員の新規雇用が難しくなったため、本年度から新たな研究協力者として京都大学の大学院生を迎え、代表者と協力してEBITの開発を進めることとした。当初は、本年6月から5ヶ月程度MPIKに滞在してEBITを完成させる計画であったが、COVID-19の感染拡大に伴う渡航制限への対応として、滞在期間を2020年10月~2021年3月と改めた。今秋までに状況の改善が見られず渡航が困難な場合も、年度内の装置完成を優先させることで先方と合意している。これによって、2021年度にはEBITとSPring-8を組み合わせた内殻過程測定実験を確実に遂行する。超新星残骸3C397のデータ解析は研究代表者の指導学生がリードして、2020年度前半には学術論文として成果発表する計画である。
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