研究課題
南極ドームふじアイスコアを利用して、酸素同位体ステージ6の百年解像度ベリリウム10分析を行った。また、同コアの数値年代を主にガス分析に基づいて向上させるとともに、ガス分析融解水のベリリウム10分析を継続した。さらに、南極大陸でのベリリウム10の時空間分布を正確に把握するために、第63次南極地域観測隊に同行者(大谷 昂)を派遣し、表層積雪の採取を行った。これらに加えて、太平洋とインド洋の海底堆積物を対象にした地磁気極小期の高時間解像度ベリリウム同位体分析を行った。堆積物から得られたデータは、古地磁気強度変動記録やドームふじアイスコアのベリリウム10記録と、逐次比較された。こうした試みにより、地質時代の太陽活動と地磁気変動史の詳細解明に資するデータを得ることができた。単年解像度での分析が必要な完新世の宇宙線イベントに関して、紀元前約5500年の特異な太陽極小期の性質を、ドームふじアイスコアを対象とした単年解像度でのベリリリウム10分析や数年解像度での塩素36分析により明らかにし、論文として公表した。また、下北半島猿ケ森埋没林の炭素14分析により、13世紀に少なくとも3回の巨大太陽嵐イベントが起こっていた事実を発見し、これも論文として公表した。さらに、中国雲南省の陸域炭酸塩堆積物(トラバーチン)を対象に、単年解像度のベリリウム10分析を行った。こうした試みにより、過去数千年間の短期宇宙線イベントに関する情報が集積しつつあり、これを鍵として、より古い時代のイベントを解明するための重要な手がかりが得られつつある。以上の結果を含めた関連する成果について、国際学会での発表や論文での公表を行った。また最終年度の研究に備えて、試料の分取や成果のまとめに向けた研究打ち合わせを実施した。
3: やや遅れている
本事業は大きく分けて、(1)過去50万年間の高解像度宇宙線生成核種記録の獲得と宇宙線層序による海陸の詳細対比、(2)宇宙線層序に挿入する数値年代の向上、(3)太陽活動・地磁気変動史の詳細解明、(4)未知宇宙線イベントの探索と発見、(5)宇宙線層序編年の高度化と拡張を目標としている。昨年度に引き続いて本年度も、新型コロナウイルスの影響で、アイスコア試料の分取や研究成果の公表に一部停滞を余儀なくされたが、他の事項は順調に進行した。
計画の遂行に大きな問題は生じていないことから、当初の計画通り課題を推進する予定である。
すべて 2022 2021 その他
すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 3件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (13件) (うち国際学会 9件、 招待講演 4件) 備考 (4件)
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