研究課題/領域番号 |
19H00712
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
橘 省吾 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 教授 (50361564)
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研究分担者 |
瀧川 晶 京都大学, 白眉センター, 特定助教 (10750367)
川崎 教行 北海道大学, 理学研究院, 助教 (50770278)
圦本 尚義 北海道大学, 理学研究院, 教授 (80191485)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ダスト / 酸素同位体 / 太陽系 |
研究実績の概要 |
太陽系の原材料となったダストは,太陽より前世代の恒星周囲でつくられたダスト(恒星周ダスト)や,星間空間で破壊され,再生産されたダスト(星間再生産ダスト)と考えられる.恒星周ダストは,特異な同位体組成を持つ微粒子として隕石や彗星塵などに僅かに発見される.一方,星間再生産ダストは,太陽と同じ同位体組成を持つはずであるが,ダストの集積でつくられた地球や隕石の酸素同位体組成は,太陽とは異なっている.本研究では,太陽系原材料となった「太陽型ダスト(恒星周ダストと星間再生産ダスト)」が,太陽系最初期にダストとガスとの酸素同位体交換反応を経て,地球や隕石の材料である「地球型ダスト」へと変身する過程に注目する.ダストとガスとの酸素同位体交換反応を実験で明らかにし,酸素同位体交換反応に必要な原始太陽系円盤の物理化学条件を定量的に決定し,隠された太陽系原材料物質を始原隕石中に発見することにより,太陽系での同位体交換過程を解明する.今年度は,非晶質エンスタタイトとH2Oの酸素同位体交換は,非晶質フォルステライトに比べて,1/30程度と小さく,初期太陽系での酸素同位体交換には非晶質フォルステライトに比べて,約100 K高温が必要であることがわかった.非晶質フォルステライトとCOガスとの酸素同位体交換実験では,同位体交換速度がH2Oガスとの交換に比べて小さいことがわかった.また,酸素同位体交換反応実験の前段階として,FeOの入った非晶質かんらん石,非晶質酸化アルミニウム,遷移アルミナ相の結晶化実験を開始した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
熱プラズマ法で合成されたエンスタタイト(MgSiO3)組成の非晶質ケイ酸塩とH2Oガスとの酸素同位体交換反応実験をおこなった.得られた同位体交換反応速度は,フォルステライト(Mg2SiO4)組成の非晶質ケイ酸塩とH2Oとの同位体交換反応速度と活性化エネルギーはほぼ等しいものの,絶対値が1/30程度小さいことがわかった.これにより,非晶質エンスタタイトの酸素同位体交換は,非晶質フォルステライトに比べて,約100 K高温が必要であることがわかった.結果は国際誌に発表した.非晶質フォルステライトとCOガスとの酸素同位体交換実験を開始し,酸素同位体分析により,同位体交換速度がH2Oガスとの交換に比べて小さいことがわかった.また,非晶質 Fe-Mg ケイ酸塩の合成をおこなった.作成したかんらん石組成の非晶質 Fe-Mg ケイ酸塩の結晶化実験をおこない,FeOの入った非晶質かんらん石は非晶質フォルステライトに比べて,結晶化速度が大きいことがわかった.今後,酸素同位体交換実験を開始する.ゾルゲル法でつくられた非晶質酸化アルミニウム(Al2O3)の同位体交換実験の準備として,結晶化実験をおこない,γ相への結晶化条件,γ相からα相への結晶化条件を決定した.また,複数の酸化アルミニウム遷移相とH2Oとの酸素同位体交換実験を開始した.
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今後の研究の推進方策 |
非晶質フォルステライトとCOガスとの酸素同位体交換実験を継続し,同位体交換反応速度の温度,CO分圧依存性ならびに反応機構を決定する.結果に基づいて,H2Oまで含めた初期太陽系での酸素同位体交換モデルを作成する.非晶質 Fe-Mg ケイ酸塩,酸化アルミニウムとH2Oガスとの酸素同位体交換実験を開始,継続し,同位体交換反応速度,温度・ガス分圧依存性を決定する.結果に基づいて,反応メカニズムを議論する.これらの結果をもとに隕石中での残留条件を検討し,隕石中での同位体異常探索の効率化に用いる.
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