研究課題
高温高圧環境の地球中心から地表へと向かう大きな熱流は外核とマントルの対流を誘起することにより、約40億年続くとされる地球ダイナモやプレート運動などの原動力となる。熱伝導率や電気伝導度、粘性率などの輸送特性は地球内部の温度構造と熱進化、ダイナミクスを探るための基礎的な物理量だが、地球中心核の温度圧力条件での測定例は極めて少なく、その報告値には研究者間で大きな差異が生じている。本研究の目的は、核を構成する鉄ー軽元素合金の液体、固体状態での熱輸送特性を実際の地球中心核の温度圧力条件における実験から制約することである。実験で得られる物質の電気・ 熱伝導率、自己拡散係数から外核・内核の伝導と対流による熱輸送特性を明らかにし、地球の熱進化に制約を与えることを目指す。本課題の3本の柱は、1)放射光X線回折測定実験によって選択配向評価を行った多結晶体hcp鉄の高温高圧下その場電気・熱伝導率同時測定、2)二次イオン質量分析法(SIMS)を用いた鉄同位体比測定による、hcp鉄の高温高圧下自己拡散係数決定、3)鉄(および鉄合金)の溶融状態での伝導度測定である。これら3つのテーマを代表者、分担者、指導学生が主体的に取り組んだ。1)のテーマについては、六方最密充填構造の鉄多結晶試料の熱伝導率を地球中心核条件で測定することに成功し、固体鉄の熱伝導率の温度依存性の符号が70 GPa付近で負から正へと逆転することを明らかにした。この温度依存性の変化が地球中心核のような高温高圧極限条件下での鉄の高い伝導度の原因となっているといえる。この結果を投稿論文として投稿した。2)のテーマでは、SIMS分析によって25 GPaまでの鉄試料の同位体拡散の観察に成功した。3)のテーマでは、液体鉄の電気抵抗率を135 GPa万気圧まで測定し、その結果を論文として出版した。
令和4年度が最終年度であるため、記入しない。
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American Mineralogist
巻: - ページ: -
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