研究課題/領域番号 |
19H00718
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
金子 克哉 神戸大学, 理学研究科, 教授 (40335229)
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研究分担者 |
鈴木 桂子 神戸大学, 海洋底探査センター, 客員教授 (20192544)
巽 好幸 神戸大学, 海洋底探査センター, 客員教授 (40171722)
中岡 礼奈 神戸大学, 海洋底探査センター, 助教 (40756673)
羽生 毅 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 海域地震火山部門(火山・地球内部研究センター), グループリーダー (50359197)
谷 健一郎 独立行政法人国立科学博物館, 地学研究部, 研究主幹 (70359206)
清杉 孝司 神戸大学, 海洋底探査センター, 講師 (90768722)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | カルデラ火山 / 阿蘇 / 姶良 / 鬼界 / 大規模珪長質マグマ / 下部地殻溶融 |
研究実績の概要 |
カルデラ火山は,大陸地殻を持つ火山帯に普遍的に存在し,大量の大規模珪長質マグマを生産・噴出し,広範囲に壊滅的な被害をもたらすこともある.加えて,地球科学の基本問題である大陸地殻の形成と進化に直接関わっており重要な研究対象である. 2021年度でも引き続き,九州の阿蘇,姶良,鬼界の3つのカルデラ火山のマグマ発生に関わる岩石学的,地球科学的研究を行うとともに,それらの研究により得られたデータから噴火現象に関わる火山学的な検討も行った.阿蘇火山では,噴出物斑晶中のメルトインクルージョンの分析を主として行い,これまで得られていたメルトインクルージョンに基づくマグマの多様性を整理し,結論として阿蘇のマグマは,熱源となったマントルで生成したマグマと下部地殻溶融のマグマの2種類が本質であることを明らかにした.さらに,熱源マグマの水量が多いこと,また,大量の珪長質マグマの起源物質である下部地殻は含水量が少ないことを明らかにした.姶良火山では,噴出物の同位体組成および微量元素組成の分析を主として行い,珪長質マグマが生成した下部地殻の岩石学的条件を明らかにするとともに,噴出に直接かかわった浅部マグマ溜まりでの地殻同化過程を明らかにした.また,3万年前の大規模噴火後にマグマ供給系の条件が大きく変化したことを明らかにした.鬼界火山では,7300年前の大規模噴火の海底化の火砕流分布を岩石学的研究と地震学的研究から明らかにし,精密な体積見積もりを行い,先研究で見積もられた倍の海底火砕流堆積物が存在していたことを明らかにした.また,3回の大規模噴火の毎に,マグマ供給系が大きく変わり,大規模噴火が終了するとマグマの性質が変化し,次の大規模噴火のマグマ性質へと変化する可能性が明らかになった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
阿蘇火山研究については,メルトインクルージョンの分析とその結果の解析に関して一部は順調に進めることができた.その一方で,2021年度にLA-ICPMSを用いた微量元素分析を行う計画であったが,COVID-19の感染状況が悪く,他の分析機関の出張や受け入れが制限され,十分にできなかった.現在,国際誌への論文を準備しており,次年度前半には投稿できる予定である. 姶良火山研究については,計画通りのことがおおむね達成され,研究は順調に進められている.現在,国際誌への論文を準備しており,次年度前半には投稿できる予定である. 鬼界火山研究については,ほかのプロジェクトと共同で行った反射法地震探査により,海底の火砕流分布が推定され,本プロジェクトにおいて,岩石学的検討を行い,その火砕流が7300年前のものであることが確定された.現在国際誌に論文投稿中である.一方,現地における追加の調査および試料採取が必要であったが,離島であることもあり,COVID-19の状況で計画した調査が十分に遂行できなかった.
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今後の研究の推進方策 |
阿蘇火山研究においては,本年度に十分にできなかったメルトインクルージョンのLA-ICPMSによる微量元素組成分析を行い,加えてFT-IRを用いてマグマの揮発元素組成(主として水量)の直接測定を行い.マントル及び地殻の岩石学的,地球化学的条件を明らかにする.これにより,マグマ発生場の存在鉱物を明らかにし圧力の推定を行い,また岩石学的に推定された水量のクロスチェックを行う. 鬼界火山研究においては,少し遅れている12万年前と9.5万年前の大規模噴火の岩石学的な検討を行う.そのために,薩摩硫黄島と竹島において追加の地質調査と岩石試料採取を行う.また,7300年前と9.5万年前の大規模噴火の海底コア試料を得たため,その試料中の結晶のメルトインクルージョンの岩石学的,地球化学的データを得て,マグマ発生領域の考察を行う. また当初は予定していなかったが,大規模噴火を起こすカルデラ火山と,そのような噴火を起こさない非カルデラ火山の比較研究が重要であると認識した.そのため阿蘇火山の北約20kmに位置する非カルデラ火山である九重の岩石学的研究を行い,大量のマグマ生成が起こる場合怒らない場合のマグマ供給系の違いを明らかにする.
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