研究課題
地震波速度異方性の存在から、固体金属でできた地球の内核で大規模な流動変形が起こっていることが示唆されているが、内核での流動変形の実態は内核物質の物性の理解が不十分なためよくわかっていない。本研究では、内核の主要構成物質であるhcp鉄とその関連物質の変形実験と元素拡散実験によりhcp鉄のレオロジーをミクロな素過程から総合的に解明し、内核の異方的構造のメカニズムに迫ることを目指す。2019年度は、高エネルギー加速器研究機構、PF-AR, NE7Aに設置されているD111型高圧変形実験装置を用いてhcp鉄の高温高圧変形その場観察実験を行なった。圧力16-23GPa、温度423-873Kで行なった歪速度ステップ、温度ステップ、圧力ステップ実験の結果を組み合わせてhcp鉄の流動則を決定した。これよると約800K以上の高温で卓越するべき乗則クリープの流動則パラメータを用いて外挿すると、このメカニズムでは地球内核での粘性率は10^18 Pa・s 以上の高い値をとることが示唆される。また、並行して低圧相であるbcc鉄の高温高圧変形その場観察実験を高輝度光科学研究センター、BL04B1に設置されてるSPEED-MkII-Dを用いて行ない、圧力2-6GPa、温度523-823Kの条件下で多くのデータを取得している。元素拡散実験では鉄と鉄ニッケル合金のペアを試料として用いた高温高圧実験を開始した。高温高圧変形実験をより高精度で行うことを目的として、変位の測定と制御のための「渦電流式変位センサ」を購入・設置を行なった。
1: 当初の計画以上に進展している
当初の計画どおり、hcp鉄の高温高圧変形実験が順調に進み23GPaまでの流動則が決定され、元素拡散実験では鉄と鉄ニッケル合金のペアを試料として用いた高温高圧実験も開始された。さらに当初の計画以上に、bcc鉄の高温高圧変形実験でも多くのデータが得られている。
2020年度は、放射光を用いた実験によりhcpコバルトの定量的な変形データ取得を行うと同時に、より高い圧力での実験の技術開発を進める。また元素拡散実験を愛媛大学で進め25GPaまでのデータを取得する。従来より高圧での変形実験を実現するために「高圧変形実験用D111型ガイドブロック」を購入・設置する。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (17件) (うち国際学会 1件)
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