研究課題/領域番号 |
19H00723
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
西原 遊 愛媛大学, 地球深部ダイナミクス研究センター, 教授 (10397036)
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研究分担者 |
西 真之 大阪大学, 理学研究科, 准教授 (10584120)
大内 智博 愛媛大学, 地球深部ダイナミクス研究センター, 准教授 (60570504)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 地球中心核 / hcp鉄 / 高温高圧変形実験 / レオロジー |
研究実績の概要 |
地震波速度異方性の存在から、固体金属でできた地球の内核で大規模な流動変形が起こっていることが示唆されているが、内核での流動変形の実態は内核物質の物性の理解が不十分なためよくわかっていない。本研究では、内核の主要構成物質であるhcp鉄とその関連物質の変形実験と元素拡散実験によりhcp鉄のレオロジーをミクロな素過程から総合的に解明し、内核の異方的構造のメカニズムに迫ることを目指す。 2019年度には、高エネルギー加速器研究機構、AF-AR, NE7Aに設置されているD111型高圧変形実験装置を用いてhcp鉄の高温高圧変形その場観察実験を行い。圧力16-23GPa、温度423-873Kで行なった歪速度ステップ、温度ステップ、圧力ステップ実験の結果を組み合わせてhcp鉄の流動則を決定した。約800K以上の高温で卓越するべき乗則クリープの流動則パラメータを用いて外挿すると、地球内核での粘性率は10^18 Pa・s 以上の高い値をとることが示唆された。 2020年度は、低圧相であるbcc鉄の高温高圧変形その場観察実験のデータの解析を行った。高輝度光科学研究センター、BL04B1に設置のSPEED-MkII-Dを用いて行った圧力2-6GPa、温度523-823Kの結果を解析した結果、温度800K以下ではべき乗則クリープが、800K以上の温度では拡散クリープが卓越することが示唆された。結果に基づくと、bcc鉄のべき乗則クリープでの歪速度は同じ応力下ではhcp鉄に比べ5桁も速いことが示された。また、元素拡散実験では鉄と鉄ニッケル合金のペアを試料として用いた高温高圧実験を行ない、最高16GPaでの結果を得た。 また、2020年度には「高圧変形実験用D111型ガイドブロック」をSPring-8に導入した。これによりD111型高圧変形装置による23GPa以上の高圧下での定量的変形実験の準備が整った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の計画どおり、すでにhcp鉄の高温高圧変形実験が順調に進み23GPaまでの流動則が決定され、元素拡散実験では鉄と鉄ニッケル合金のペアを試料として用いた高温高圧実験も順調に進んでいる。また当初の計画以上の進展として、bcc鉄の流動則が高温高圧変形実験により決定されたことが挙げられる。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度には、SPring-8におけるD111型高圧変形装置を用いた実験方法を最適化し、最高30GPaのhcp鉄の定量的変形データの取得に臨む。同時に、fcc相における鉄-ニッケル相互拡散実験を最高25GPaまでの高圧下で行う。拡散実験では将来的なhcp相についての実験を見据えて、比較低温での長時間の実験を模索する。
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