研究課題/領域番号 |
19H00726
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研究機関 | 千葉工業大学 |
研究代表者 |
黒澤 耕介 千葉工業大学, 惑星探査研究センター, 上席研究員 (80616433)
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研究分担者 |
玄田 英典 東京工業大学, 地球生命研究所, 准教授 (90456260)
新原 隆史 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 助教 (20733679)
三河内 岳 東京大学, 総合研究博物館, 教授 (30272462)
鹿山 雅裕 東京大学, 大学院総合文化研究科, 助教 (30634068)
小池 みずほ 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 宇宙科学研究所, 特別研究員(PD) (60836154)
佐野 有司 東京大学, 大気海洋研究所, 教授 (50162524)
松井 孝典 千葉工業大学, 惑星探査研究センター, 所長 (80114643)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 天体衝突 / 隕石 / 衝撃変成 / 太陽系軌道進化 / 二段式水素ガス銃 / 局所電子線分析 / 偏光顕微鏡観察 / 数値衝突計算 |
研究実績の概要 |
本研究課題の起点である岩石物質の「塑性変形加熱」の効果を実証した. 数値衝突計算で炭酸塩岩からの脱ガス量を計算し先行研究の実験結果と比較した. その結果, 完全流体モデルでは実験結果よりも系統的に少ない脱ガス量となり, 弾塑性体モデルで塑性変形加熱が顕著に起こる場合のみ実験結果を再現できることを確かめた.
2020年度より博士研究員を雇用し, 3次元衝撃回収実験手順を確立した.まずは地球上の典型的な堆積岩である炭酸塩岩(大理石), 火成岩である玄武岩を用いて衝撃回収実験を行った. 初期の層序を保ったまま衝撃を受けた試料を回収できるまで手順を最適化した. 衝突点に近づくほど衝撃後の変化が顕著になる様子が観察され, 狙い通りに天然衝突と同様の幾何条件で衝撃を受けた試料を回収することができた. 試料が経験した衝撃圧力を定量化するため数値衝突計算を実施した. その結果, 炭酸塩岩がおよそ3 GPaで波状消光と呼ばれる組織を示すようになり, 衝撃指標となり得ることを見出した. また玄武岩では~10 GPa程度の比較的低い衝撃圧で局所的に熔融脈が発生することを発見した. 数値衝突計算で温度上昇も調べたところ, 10 GPa程度では玄武岩の融点を超えることはなかった. 衝撃時の温度分布が従来の想定よりも著しく局在化する可能性を示唆する. このような低い衝撃圧力と熔融脈の存在が観られる組織はHED隕石中で実際に発見されている. この組織を読み解く圧力の尺度を定量的に与えたことになる.
実際の隕石分析でも成果が得られた. 高解像度二次イオン質量分析を用いて, 小惑星ベスタ由来の隕石に含まれる微小リン酸塩鉱物のU-Pb年代を測定し, 小惑星が経験した41.5億年以前の天体衝突の痕跡を発見した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
博士研究員の雇用が予定より半年遅れたことに加え, 2020年度初めからのコロナ禍により, 実験を思うように進められているとは言えない. 特に事前加熱試料への衝撃実験の予定が大幅に遅れている状況である. しかし, 衝撃回収実験の手順はほぼ確立し, 順調に実験を進められる体制は構築できたこと, 在宅勤務時間を利用して数値衝突計算を用いた理論研究は大きく進展したことから「(3)やや遅れている」と評価した.
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今後の研究の推進方策 |
2021年度は初年度に導入した試料の事前加熱用ヒータを活用した加熱試料の衝撃回収実験を集中的に実施する. 系統的に初期温度を変化させた衝撃実験を実施し, 回収した試料を光学観察, 電子線分析で精査することにより衝撃変成における温度の効果を定量的に明らかにしていく.
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