研究課題/領域番号 |
19H00734
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
厨川 常元 東北大学, 医工学研究科, 教授 (90170092)
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研究分担者 |
嶋田 慶太 東北大学, 工学研究科, 助教 (30633383)
水谷 正義 東北大学, 工学研究科, 准教授 (50398640)
久保 百司 東北大学, 金属材料研究所, 教授 (90241538)
今野 豊彦 東北大学, 金属材料研究所, 教授 (90260447)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ウルトラファインバブル / 研磨加工 / 切削加工 / ハイブリッドテクスチャリング / 分子動力学 / 膜沸騰 |
研究実績の概要 |
本研究はウルトラファインバブル(UFB)の基礎的な流動・圧壊ダイナミクスを大規模分子動力学シミュレーションにより解明し、その知見に基づき窒化ガリウム(GaN)等のウエハの最終仕上げ研磨加工(化学メカニカル研磨CMP)とチタン合金の超高能率切削加工に応用展開し、加工の高能率化、高精度化を実現することを目的とする。そしてUFBの効果を最大化するため研磨加工においては超音波援用供給法を、また切削加工においては工具すくい面と逃げ面にマイクロテクスチャリング処理を施した機能性工具を試作し、それぞれの加工性能の向上を実現する。本年度は主として、UFBの大規模分子動力学シミュレーション、並びにUFBの膜沸騰特性評価を行うとともに、GaNウエハの加工表面のサブサーフェースダメージの評価法に関して検討した。以下にその結果を示す。 ①UFBの流動・圧壊ダイナミクス解明:昨年度は従来の10倍以上の数100万原子のモデルを作成しその圧壊過程をシミュレーションすることに成功した。今年度はさらに大きなUFB直径が100nmのモデル作成を試みた。 ②UFBの圧壊装置の設計試作:1年目に引き続き、UFB発生装置、並びに圧壊装置の改良を行った。UFBの発生効率を向上させる改良を行い、9億個/CC台を達成した。 ③UFB加工液の伝熱特性評価実験:UFB加工液の基礎的な伝熱特性の把握が重要であることがわかったため、本年度はUFB加工液の膜沸騰曲線を測定し、通常の加工液との比較検討を行った。 ④研磨加工における加工ダメージ評価:加工変質層のPL発光量とTEMによる表面の断面観察結果を比較し、加工変質層厚みが256 nm以下の場合、PL発光量と加工変質層厚さに反比例の関係があることを示した。 ⑤UFB含有加工液を用いた高能率切削加工実験:高能率切削加工のためのUFB用切削工具のすくい面にハイブリッドテクスチャリングを行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
理由:今年の進捗状況は下記の通り。 ①UFBの流動・圧壊ダイナミクス解明:昨年度は従来の10倍以上の数100万原子のモデルを作成しその圧壊過程をシミュレーションすることに成功した。今年度はさらに大きなUFB直径100nm以上のモデル作成を試みた。 ②UFBの圧壊装置の設計試作:1年目に引き続き、UFB発生装置、並びに圧壊装置の改良を行った。UFBの発生効率を向上させる改良を行い、9~10億個/CCを達成した。 ③UFB加工液の伝熱特性評価実験:UFB加工液の基礎的な伝熱特性の把握が重要であることがわかったため、本年度はUFB加工液の膜沸騰曲線を測定するとともに、高速度カメラによる観察を行った。その結果、準定常的な沸騰の過程においてはUFBが冷却性能に及ぼす影響は少ないことが明らかになった。また過熱度50~100 K付近ではAirUFB水に比べCO2UFB水の冷却性能が高く、通常の水(脱気後)の冷却性能は低いことが分かった。 ④研磨加工における加工ダメージ評価:加工変質層の評価法としてPLを用いた。その測定値と透過型電子顕微鏡(TEM)による表面の断面観察結果を比較し、加工変質層厚みが256 nm以下の場合、PL発光量と加工変質層厚さに反比例の関係があることを示した。 ⑤UFB含有加工液を用いた高能率切削加工実験:プラズマショット法により改質特性を行った凹凸表面に対し、さらに超短パルスレーザ照射を行うことによりLIPSを形成するハイブリッドテクスチャリングを提案した。その方法により高能率切削加工のためのUFB用切削工具のすくい面に行い、その改質特性や表面性状の観察・評価を行った。濡れ性が変化するとともに、硬さが増加した。また摩擦係数が低減することも確認され、切削特性が向上した。
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今後の研究の推進方策 |
2年目に引き続き、下記の項目を継続して検討するとともに、UFB発生量の安定化のためのUFB装置改良、UFBの伝熱特性把握のため、膜沸騰曲線の実測、実際の工作物温度に与える影響に関してする。 ①UFBの流動・圧壊ダイナミクス解明:次年度も引き続き、実際のUFBの大きさに近いサイズ(UFB直径が100nm以上)のモデル作成を試みる。 ②UFBの圧壊装置の設計試作:2年目で明らかになったUFBタンクや配管の洗浄方法、配管等の材質等により、発生効率がばらつくメカニズムとその対策に関して検討する。 ③UFB加工液の伝熱特性評価実験:昨年度に引き続き、UFB加工液の基礎的な伝熱特性、膜沸騰特性に関して検討する。また同時に沸騰過程を高速度カメラで観察する。さらに本年度、実際の工作物表面での冷却特性に関しても、通常の加工液との比較検討を行う。 ④UFB加工液による加工表面へのダメージ評価:UFB加工液を供給した場合の工作物表面への損傷に関して透過型電子顕微鏡(TEM)や走査型電子顕微鏡(SEM)による表面並びに断面の観察を行い、UFB援用の効果を検討する。 ⑤UFB含有加工液を用いた高能率切削加工実験:昨年度作製したハイブリッドテクスチャリングを施したUFB用切削工具を用いて切削実験を行い、その効果について検討する。
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