研究課題
市販のレーザー焼結装置は,そのほとんどが遠赤外領域の光を発生する,炭酸ガスレーザーを搭載している.本課題では,市販のレーザー焼結装置を用いて,レーザー焼結とLaser Direct Structuring(LDS)の活性化の両方を実現する工法の開発を目指したが,樹脂がよく吸収する遠赤外光では,上向きの面の活性化はできるが,造形物や下方に向いた面の活性化は原理的に不可能であることが示された.そこで本年度は近赤外光を発光するファイバーレーザーによる,造形と活性化を目指した.近赤外光は樹脂にほとんど吸収されないため,レーザー焼結の光源としてはあまり使われていないが,LDSにおける活性化においては広く用いられている.近赤外光はLDSの添加剤として用いられている酸化金属等によく吸収されるため,その照射によりまず添加剤のみが発熱し,さらにその熱により周囲の樹脂が加熱され,分解温度に達すると分解ガスが生じ,その分解ガスにより,酸化金属が還元されて,金属核を生成する,と言うのが一般的な活性化の機序である.一方,近赤外光で樹脂をレーザー焼結するには,樹脂を溶融するための吸収剤が必要であるが,先に述べたように,LDSの添加剤が吸収剤となるので,分解の制御が可能であれば,活性化を抑えつつ造形を行い,必要に応じて分解を生じさせれば,選択的な活性化も可能になる.昨年度までに,分解の発生には照射強度が支配的であることが分かっていたことから,分解を生じない照射強度をもとめ,溶融樹脂の温度を最大にすることで,強固な造形物を製造することに成功した.さらには,添加剤の添加量を最適化することで,意図しない活性化を生じずかつ金属箔の密着強度を最大にする条件を見いだし,UTS90MPaの造形物の上に,2N/mm2の密着強度の回路を生成することに成功した.
令和3年度が最終年度であるため、記入しない。
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