研究課題/領域番号 |
19H00747
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
辻 義之 名古屋大学, 工学研究科, 教授 (00252255)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 量子乱流 / 高レイノルズ数乱流 / 渦構造 |
研究実績の概要 |
今年度は以下の項目について研究を実施した。その概要をまとめる。 [A] 量子渦のラグランジュ軌道解析によるKolmogorovスペクトルの算出:3次元的なラグランジュ軌道の計測を目的とした複数台カメラでの計測システムの構築をおこなった。光学的な制約を少なくするための計測体系とレーザー位置の関係を予備的計測から確認した。速度場の計測をおこない、測定精度に与える問題点を明らかにした。 [B]壁乱流における平均速度分布の計測:正方形ダクト内に微細粒子(個体水素)播種して、そのラグランジュ速度を計測することから、超流動成分と常流動成分につ追随する微細粒子の速度分布を算出した。個体壁からの影響をうけ、非一様な速度場が形成されることを明らかにした。 [C]Heエキシマを利用した速度計測法の開発:プラズマ放電を利用したエキシマの生成をおこない、その発生を分光スペクトルにより確認できた。より高精度な可視化を試みるため、光電子増倍管およびIIカメラを用いた計測を実施してその問題点を明らかにした。プラズマ放電に関しても、より簡易におこなえる装置の改良に取り掛かっている。 [D]乱流の普遍性の理解、量子乱流と古典乱流との統一的理解:微細粒子のラグランジュ軌道の解析から、自己相似的な軌道の出現と、過去および未来の記憶効果が存在することを実験データの解析から明らかにした。この統計的性質は古典乱流、量子乱流ともに内在しており、両者の普遍性をより深く解釈できる可能性を示唆している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
可視化実験をおこなうためのレーザーが故障したため、代替の可視化体系を構築する必要があった。世界的なヘリウムの高騰から、外部業者からの購入が制限されており、今後の実験実施に支障が出ることが懸念される。
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今後の研究の推進方策 |
[A] 量子渦の三次元ラグランジュ軌道解析:3次元的なラグランジュ軌道の計測を実施する。水を用いた流動場での予備実験を早急に完了をして、すでに準備をしてある新デュアーでの計測をおこなう。予備実験に基づき、新デュアーにおけるカメラ設置を確定する。 [B]壁乱流における平均速度分布の計測:個体壁からの非一様性を定量的に評価するために、古典乱流場との比較をおこなう。実験条件を変えた計測から、体系的なデータ解釈をおこなう。壁乱流の普遍的性質を見出すための考察をすすめる。 [C]Heエキシマを利用した速度計測法の開発:プラズマ放電方法のより効率的かつ小型化を進める。IIカメラとの同期をおこない、画像データの高精度化を試みることと、エキシマの流動を観察する。生成されるエキシマの粒径と頻度を計測することで、可視化閉塞を高度化するための基礎データとする。 [D]乱流の普遍性の理解、量子乱流と古典乱流との統一的理解:微細粒子の自己相似的な軌道解析を多粒子に展開することで、渦相互の干渉の解析を実施する。渦構造がバンドルを形成する過程を古典乱流場との比較から考察することで、普遍的な性質を抽出する。
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