研究課題/領域番号 |
19H00750
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
奥乃 博 早稲田大学, 理工学術院, 教授(任期付) (60318201)
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研究分担者 |
公文 誠 熊本大学, 大学院先端科学研究部(工), 准教授 (70332864)
干場 功太郎 神奈川大学, 工学部, 助教 (50782182)
鈴木 太郎 千葉工業大学, 未来ロボット技術研究センター, 主任研究員 (80710368)
劉 浩 千葉大学, 大学院工学研究院, 教授 (40303698)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ドローン音響学 / ドローン用マイクロフォンアレイ / 音源定位・分離・音声認識 / 3Dレザー計測 / 鳥の飛翔に倣った静音翼 / ドローン聴覚 / 凧式ドローン / データーフュージョン |
研究実績の概要 |
初年度は『ドローン聴覚の要素技術の開発』に取り組んだ.各WPの実績を次に示す. 【WP1:リアルタイム音響処理】①マイクアレイの内蔵PC用に探査精度もリアルタイム性も高い音源探査手法を基本MUSIC法と四則演算のみを用いて開発.シミュレーションにより探査精度が従来手法GSVD-MUSIC法より向上する条件を解明.②複数音源の識別技術を開発し,複数音源追跡時の課題であるデータアソシエーションの曖昧性に対し,音源情報を用いた解消法(GNN-c)を考案.実験により音源位置推定誤差が3m程度を確認(J論文).複数音源の追跡精度の向上を確認(J論文・国際会議). 【WP2:3Dレーザ計測】③複数のGNSSとLiDARを組合せた三次元計測システムの小型化・高精度化のために,慣性センサとGNSSを複合した三次元計測手法を考案.アンテナ数の削減,アンテナ間距離の縮小に対し,従来と同程度の計測精度が達成を確認(解説,国際会議).【WP3:システム統合】④ドローン聴覚の地上GUI構成法をUIの観点から設計・実装(国際会議). 【WP4:生物模倣による静音化】⑤プロペラ静音化の生物模倣設計での課題,加工の複雑さ・精度・再現性を解決する静音化構造を開発し,商用プロペラを用いて性能評価.低騒音化・飛行効率向上の両立はいまだ難しいが,低騒音化に寄与し,プロペラ表面の加工面において大幅な改善を達成(学会招待講演). 【WP5:凧式ドローンによる滑空による静音化】⑥複数音源存在下での音源位置推定(②)を効率的に行う飛行経路計画法を開発(国際会議発表).⑦ ②のマルチモーダル展開として音源情報と画像情報との統合による音源位置推定を検討(学会発表).⑧提案アルゴリズムのProof of Concept用プラットフォームとして,飛行時のエゴノイズの低減,安定した収音・計測を実現する.牽引型凧式ドローンを開発.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
【計画より進捗した点】【WP1】複数音源追跡については,複数音源の追跡時の定位情報と既追跡音源とのデータアソシエーションの曖昧性解消法を考案し,さらに,音源位置推定に応用し,その有効性を実機実験で検証を行った.この成果はジャーナル論文2件,国際会議2件が採録された.【WP3】そのドローン音響のユーザインタフェースは,これまで着手してきたImPACTでの経験をもとに,国際会議論文として発表を行った. 【計画通りの進捗点】【WP2】慣性センサを複数組合せ,従来より間隔を狭くした少数のGNSSアンテナで3D計測システムを開発し,従来の高精度を維持したまま小型化を達成.さらに,開発中の牽引型凧式ドローン用の設計が完了.【WP4】「騒音特性と空力性能のトレードオフ」に対して,空力性能をほぼ維持したまま低騒音化に大幅に寄与する静音化構造を開発.さらに,騒音の音響特性が個体ごとに暗転することを発見し,WP1の帯域制限型MUSICによる音源定位処理へのフィードバックを開始.【WP5】凧式ドローンに音響機器と3D計測システムを搭載するために「牽引型」の設計を考案.複数音源位置推定の効率化のためにロータ型ドローンの飛行計画立案法を開発. 【計画より遅れている点】【WP1】令和元年6月13日全面施行となった改正ドローン規制法により,ドローンの飛行実験が可能な場所が限定され,また,改正航空法により操縦士の資格が厳しくなり,飛行実験が難しくなった.本年度は2月に熊本新港の実験場使用権を有するスカイリモート社の協力を得て,WP1+WP3で実験を行うことができた.しかし,個別に行いたい小規模実験の目途がつかず,熊本大学グループを除いては,屋内実験が可能な天井の高い実験設備を探索中である.
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今後の研究の推進方策 |
2年目は初年度開発したドローン聴覚の要素技術のシステム統合を中心に進める.WPの具体的な内容は次の通りである. 【WP1:リアルタイム音響処理】①低SN比かつ動的雑音に頑健な高精度に音源探査の開発.②シングルボードPC用に性能を維持した処理の最適化.③収録データの機械学習による音源同定の開発.④音源情報を利用した複数音源追跡時の曖昧性解消. 【WP2+5:凧式ドローン上での3Dレーザ計測】⑤凧式ドローンへのGNSSアンテナの搭載と3D点群構築法の開発,⑥高度情報の高性能化.【WP3+2:システム統合】⑦粗3D点群を用いた統合型音源位置推定・追跡法の開発.【WP3+4+1:システム統合】⑧静音翼の音響特性に基づいた周波数帯選択型MUSICによる音源定位の高性能化と静音翼の効果を評価. 【WP4:生物模倣による静音化】⑨サイズ・形状の異なるプロペラに同一の静音化構造を付与したモデルを用いて,騒音レベル・飛行安定性・機動性を実験・数値計算により評価,⑩個々のプロペラでの最適化構造の導出と,異なるサイズ・翼形状を有する機体間で静音化・高効率化へ寄与する包括的な設計指針を導出・検証.【WP5:凧式ドローンによる滑空による静音化】⑪初年度開発した親子型凧式ドローンの飛行姿勢の推定と安定化制御の開発,⑫親子型凧式ドローンの凧式ドローンに搭載したマイクアレイによる地上音検知とその評価. 上記は,音源情報や静音翼の音響特性といった認知情報を活用した「認知行動サイクル」をベースとする手法であり,「認知ドローン聴覚」の一環と位置付けられる.最終年度に向けて「認知ドローン聴覚」の足場固めをする.また,開発したドローン聴覚の音響処理技術はロボット聴覚ソフトウエアHARKに組込み,公開するとともに無料講習会を実施する.また,認知ドローン聴覚の国際的な研究コミュニティの確立を図る.
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