研究課題/領域番号 |
19H00755
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
長汐 晃輔 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 教授 (20373441)
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研究分担者 |
吾郷 浩樹 九州大学, グローバルイノベーションセンター, 教授 (10356355)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | トンネルFET / 低消費電力 / 2Dヘテロ界面 |
研究実績の概要 |
低消費電力化だけでなくトンネル距離をvan der Waals距離にまで低減し高い駆動電流の実現が可能な二次元トンネルFET(2D-TFET)が研究されている.我々は既にp+MoS2 をソースとしたN型-MoS2-TFETでSS < 60mV/decを報告している.相補型動作のためにはP型2D-TFETが必要となるが,N型と異なりほとんど報告がない.これはP型TFETのソースに必要な高濃度n型2D結晶の候補が少ないことに起因している.これまでの断片的な輸送特性に関する先行研究において,10nm程度の膜厚でオフが取れないことから最大空乏層幅が10nm程度と予想され,これは高濃度結晶であることを示唆している.そこで,高濃度n型と予想されるPtS2とSnSe2について,磁場を印加してホール測定を行うことで,キャリア密度を直接計測しTFETに適した高濃度n型結晶の探索を行った. その結果,nの温度依存性はPtS2とSnSe2に明確な違いが表れた.PtS2のnは300 Kで~3.6×10^17 cm-3と求められ,これはMoS2とほぼ同じ値であり先行研究からの予想に反し低ドープ濃度であることが明らかになった.温度依存性から活性化エネルギーEAは98.8 meVと求められ,これはドナー準位の価電子帯からの深さを表していると考えられる.nとEAからドナー密度NDは~7.3×10^17 cm-3と計算された.これらPtS2のnやその温度依存性,ドナー準位は本研究によって初めて明らかになった.一方のSnSe2ではnに温度依存性が無く,300 KでnとNDは等しく,~ 4.7×10^18 cm-3であり,EAは0.4 meVとドナー準位がかなり浅い所にあることが分かった.この結果から,SnS2がTFETに対する高濃度n型結晶として適していることが分かった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
高濃度n型結晶の候補としてSnS2が適していることを詳細なホール計測より示すことが出来た.これによりTFETの相補型動作が期待でき,おおむね順調に進展していると考えている.
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今後の研究の推進方策 |
2D-2D界面では,3次元界面と異なりvan der Waalsの上述した面外ヘテロと化学結合の面内ヘテロの2種類が存在する.この2つの界面は理論的に取り扱われており(図9),面外ヘテロではフェルミレベルでバンドが揃い,面内ヘテロでは電気的中性点(CNL)で揃うと予想されている.CNLで揃う場合,電界効果によるバンドアライメントの変調は困難と考えられ,トンネルFETとして不適であるが,実験的には検証されていない.本年度は,面内ヘテロのTFETについて検討する.
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