研究課題/領域番号 |
19H00758
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
大見 俊一郎 東京工業大学, 工学院, 准教授 (30282859)
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研究分担者 |
長岡 克己 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 国際ナノアーキテクトニクス研究拠点, 主任研究員 (80370302)
後藤 哲也 東北大学, 未来科学技術共同研究センター, 教授 (00359556)
舟窪 浩 東京工業大学, 物質理工学院, 教授 (90219080)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 分極 / 電荷蓄積 / 強誘電体 / 高誘電率薄膜 / ECRスパッタ法 / RFマグネトロンスパッタ法 / 不揮発性メモリ |
研究実績の概要 |
本研究では、電子サイクロトロン共鳴(ECR)スパッタ法を用いた反応性スパッタプロセスにより、ゲート電極/強誘電体(ブロック層)/窒化膜(電荷蓄積層)/酸化膜(トンネル層)/Si構造(FeNOS構造)をin-situ プロセスで形成することにより、高品質な界面特性を有するハフニウム(Hf)系FeNOS型不揮発性多値メモリを実現することを目的としている。 研究代表者は、窒化ハフニウム電極(HfN0.5)/酸化ハフニウム(HfO2)ブロック層/窒化ハフニウム(HfN1.1)電荷蓄積層/酸化ハフニウム(HfO2)トンネル層/Si(100)構造(MONOS構造)を用いたMONOS型不揮発性メモリを作製し、多値動作化に関する検討を行っている。Hf系MONOS構造におけるONO層には、非晶質の薄膜を用いている。一方、Hf系FeNOS構造を実現するためには、Hf系MONOS構造のブロック層として強誘電性を示す相に結晶化させた、ノンドープHfO2薄膜を形成する必要がある。 そこでまず、結晶化したHfO2薄膜の形成に関して実績のあるRFマグネトロンスパッタ法を用いて、強誘電性ノンドープHfO2薄膜のSi基板上への直接形成行った結果、反応性スパッタプロセスにおける酸素流量比を制御することにより、Si(100)基板上において強誘電性を示す膜厚20 nmのノンドープHfO2薄膜の形成を実現した。さらに、HfO2薄膜堆積後に熱処理を行うPDAプロセスと比較して、HfO2薄膜上に窒化チタン(TiN)電極を形成した後に熱処理を行うPMAプロセスを用いることにより、膜厚10 nmのHfO2薄膜の強誘電性が向上し、3 Vでの動作を実現した。さらに、Si(100)基板上に金属Hf界面層を形成した後にHfO2薄膜を形成することにより、デバイス特性を劣化させるSiO2界面層の形成を抑制できることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は、窒化ハフニウム電極(HfN0.5)/酸化ハフニウム(HfO2)ブロック層/窒化ハフニウム(HfN1.1)電荷蓄積層/酸化ハフニウム(HfO2)トンネル層/Si(100)構造(MONOS構造)を用いたMONOS型不揮発性メモリのブロック層を、強誘電性を示すノンドープHfO2薄膜とすることにより、MONOS型不揮発性メモリにおける多値動作と強誘電体の分極特性によるアナログメモリ動作を融合した、FeNOS型不揮発性多値メモリを実現することである。 このためにHfO2薄膜およびHfN薄膜をin-situプロセスで形成することが可能である、電子サイクロトロン共鳴(ECR)スパッタ法を用いることが重要であり、ECRスパッタ法により強誘電性を示すノンドープHfO2薄膜を形成する必要がある。しかし、ECRスパッタ法を用いて強誘電性を示す相に結晶化させたHfO2薄膜の形成は、現在まで実現されていない。このため、結晶化させたHfO2薄膜の形成に関して実績のあるRFマグネトロンスパッタ法を用いて、強誘電性ノンドープHfO2薄膜のSi基板上への形成に関する検討を行った。この結果、本研究における研究課題の一つである強誘電性を示すノンドープHfO2薄膜の形成を600℃の低温熱処理により実現し、膜厚10 nmにおいて電源電圧3 Vでの動作を実証しており、FeNOS型不揮発性多値メモリ実現に向けて重要な研究成果を得ている。 また、金属薄膜上においてイットリウムを添加した強誘電性HfO2薄膜の室温形成を実現している。さらに、MONOS構造の特性向上に関しては、トンネル層をHfON薄膜とすることにより、SiO2換算膜厚(EOT)を低減し、HfN電荷蓄積層の多層化によりしきい値電圧の高精度な制御を実現している。 以上の結果から、おおむね順調に進捗していると判断される。
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今後の研究の推進方策 |
2019年度に得られた成果を踏まえ、2020年度にはまず強誘電性ノンドープHfO2薄膜の薄膜化とデバイス応用に関する検討を行う。RFマグネトロンスパッタ法を用いた反応性スパッタプロセスにおいて、強誘電性ノンドープHfO2薄膜堆積時の形成条件を検討することにより、10 nm以下の極薄膜における強誘電性および界面特性の向上を検討する。また、強誘電体をゲート絶縁膜として用いた、強誘電体ゲートトランジスタ(MFSFET)の作製プロセスに関する検討を行う。作製プロセスとして、MFSFETのソースおよびドレイン領域を先に形成した後にゲート積層構造を形成する、ゲートラストプロセスによるMFSFETの動作実証を検討する。ここで、ソース、ドレインおよびゲート電極の形成をドライエッチングプロセスにより行うが、プラズマダメージによりデバイス特性が劣化する場合には、ウェットエッチングプロセスによる作製を検討する。 次にECRスパッタ法を用いて、ハフニウム(Hf)系MONOS型不揮発性メモリのデバイス特性向上に関する検討を行う。まず、Si基板表面原子レベル平坦化による、Hf系MONOS型不揮発性メモリのメモリ特性を評価する。Si基板表面原子レベル平坦化は、Ar/H2雰囲気中における熱処理により行う。さらに、HfN電荷蓄積層の窒素組成を変化させ多層化することにより、高精度なしきい値電圧制御を実現し、HfN電荷蓄積層における電荷蓄積のメカニズムを検討する。また、HfNのプラズマ酸化により形成したHfONをトンネル層として用い、SiO2換算膜厚(EOT)を低減したHf系MONOS型不揮発性メモリデバイスによる、高速かつ低電圧での動作に関する検討を行う。 以上の結果を踏まえて、ECRスパッタ法による強誘電性ノンドープHfO2薄膜の形成に関する基礎検討を行い、FeNOS型不揮発性メモリ実現に対する指針を示す。
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