研究課題/領域番号 |
19H00759
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
千葉 明 東京工業大学, 工学院, 教授 (30207287)
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研究分担者 |
鈴木 晴彦 福島工業高等専門学校, 電気電子システム工学科, 教授 (30201578)
朝間 淳一 静岡大学, 工学部, 准教授 (70447522)
土方 規実雄 東京都市大学, 理工学部, 講師 (70710507)
清田 恭平 富山大学, 学術研究部工学系, 助教 (10796519)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ベアリングレスモータ / アーンショウの定理 / 磁気浮上 / 磁気支持 / 1軸能動制御 / 受動磁気軸受 |
研究実績の概要 |
研究代表者と共同研究者、研究協力者などと連携を取り、アーンショウの定理で不可能とされる領域に少しずつ近づくべく、2軸能動制御から1軸能動制御、そして1軸未満へと研究、試作、実証を行ってきた。特に、東京工業大学では、能動軸を0とする方式を二つ模索した。中央リニア新幹線のように、速度が速くなると8字コイルに電流が自動的に流れて磁気支持力を発生する受動型磁気軸受とモータ、一方、研究協力者の杉元は、静止状態でも磁気浮上を実現できる反磁性グラファイト板を利用した新しいベアリングレスモータを提案し、製作した試作機を用いて低速での安定な浮上回転を実証した。 静岡大学では、パワーアンプあるいは単相インバータを追加せずに能動軸を増やす方式、すなわち三相モータ1台のみでモータの回転のみならず、もう一つのアクチュエータを制御する方式を提案した。具体的には、三相スター結線のモータ巻線において、その中性点と電源の中点の間にアクチュエータ負荷(零相負荷)を結線し、三相インバータ1台のみで三相電流と零相電流を同時に制御可能であることを実証した。目的としていた理論構築と実機実証を実現してた。 富山大学おいては、アキシャルギャップスイッチドリラクタンスモータ型による一軸能動制御ベアリングレスモータの大出力を目標として。既存の試作機の検証を行うべく、試作機の静特性の測定、および磁気浮上を含めたモータ制御部の構成を明らかにした。 研究分担者の鈴木晴彦(福島高専)は、強い異方性を示す反磁性グラファイト板の磁気特性を最大限に引き出し、非接触磁気支持力を向上させる。そのための磁気回路(磁場)の最適化を明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
現在までの進捗は、当初の計画以上に進展している。研究代表者の千葉明と各共同研究者、研究協力者と連携を取り、メールベースの情報交換だけでなく、集合して情報交換会を開催し、また、反磁性体による0軸能動制御の世界的権威であるブロイラー名誉教授に滞在していただき情報交換・今後の研究の方向性をディスカッションし、引き続き貢献いただけることになった。特に、東京工業大学の受動型スラスト磁気軸受とモータのハイブリッド化では、新しくカップ構造とすることにより低速剛性を数倍向上できることが明らかになった。反磁性グラファイト板回転子を用いたベアリングレスモータでは、回転子を突極構造とすることで、磁気浮上力とトルクを同時に発生させることが可能であることを新しく実証した。 静岡大学では、零相に直流電流を与えた際にコンデンサ電圧が不平衡になる、という問題に対する対策を検討した。零相に直流電流を流すために、パワートランジスタのような能動素子を追加せずに、受動素子であるダイオードによる整流回路を適用する方式を提案した。具体的には、三相スター結線の中性点と電源中点間に整流回路接続し、そのブリッジとしてアクチュエータ負荷を配置することで、零相には交流を流し、コンデンサ電圧不平衡を抑制しつつ、負荷には直流を供給することに成功した。 富山大学においては、スイッチドリラクタンスモータ型の一軸能動制御ベアリングレスモータにおいて、解析時には考慮されていない漏れ磁束により、モータ部にて発生するスラスト方向力、トルク共に20%解析誤差が発生することが明らかになった。一方で、スラスト方向力とトルクを同時に制御できる手法を理論計算により確立した。 また、反磁性グラファイト板の磁気支持特性向上を図るため、永久磁石磁気回路が形成する磁場の改良設計を、磁場解析と試験器を用いた計測により進め、試験器の設計製作を完了することができた。
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今後の研究の推進方策 |
東京工業大学の受動型スラスト磁気軸受とモータに関しては、実験装置を構築し、電磁界解析のように低速から磁気支持が実現できるのかを検証する。また、反磁性の磁気浮上と、受動型スラスト磁気軸受とモータを組み合わせ、低速から高速までの安定した磁気支持を模索する。東京電機大学では、新しい0軸及び1軸制御形ベアリングレスモータの試作機を製作し、実機評価を行う。静岡大学では、零相電流方式を利用した2自由度制御形(半径方向x-y)ベアリングレスモータにおいて、受動支持方向(軸方向zと傾きθx-θyの3自由度)は減衰力が小さいため、回転子の振動を抑制することができない。しかしながら、能動制御軸数を増やすと、装置が大型化する。そこで、受動素子のみで受動支持方向の減衰力を高める新しい方式を検討する。 富山大学においては、まずはスイッチドリラクタンスモータ型の一軸制御ベアリングレスモータについて、引き続き実験による磁気浮上の実証実験を進める。実証実験の結果を基に、より大型化、高剛性化させる際の傾向を解析により明らかにする。同時にモータ部に永久磁石を利用した場合の特性の初期検討を行う。 福島高専では、永久磁石磁気回路の磁場設計による反磁性グラファイト板の磁気支持力特性評価を、試験器を用いた計測実験により行い、磁気回路の新規設計を進め試作機による確認を行う。また、東京都市大学ではトルクが大きな大型ベアリングレスモータを検討する。
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