研究課題/領域番号 |
19H00761
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研究機関 | 関西学院大学 |
研究代表者 |
葛原 正明 関西学院大学, 理工学部, 教授 (20377469)
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研究分担者 |
ASUBAR JOEL 福井大学, 学術研究院工学系部門, 准教授 (10574220)
分島 彰男 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (80588575)
只友 一行 山口大学, 大学院創成科学研究科, 教授 (10379927)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 準ミリ波 / トランジスタ / 窒化物半導体 / 無線電力伝送 / 電力増幅器 / 破壊電界 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、第5世代移動体通信で周波数の割り当てが確定した準ミリ波帯(20-30GHz)にて動作する高出力GaN-HEMT増幅器を開発することである。具体的には、電力合成回路を用いることなくワンチップで(またはその数を最小限にして)出力10W以上の増幅性能をもつ準ミリ波帯GaN-HEMTを開発することである。本デバイスは、今後応用の拡大が期待される無線電力伝送用の送信増幅器としてもその応用が期待されており、システムの小型化と送信電力密度の向上に貢献するものである。準ミリ波帯で数W級の出力電力を達成するため、1)破壊電界特性に優れた半絶縁性自立GaN基板とその上にAlGaN/GaNヘテロ接合成長技術を開発し、2)電子線露光によるサブμmゲート電極プロセスを用いて高周波GaN-HEMT作製プロセスを開発し、3)試作した準ミリ波帯GaN-HEMTの24GHz帯での高出力特性評価のためのロードプル系評価を行うことが大切である。 まず半絶縁性GaN基板の育成(担当:山口大)において、GaN基板の抵抗率低下の原因となるドナー不純物濃度の抑制を検討し、Fe添加したGaN基板の成長を行った。基板の抵抗率として、2E+9 Ωcm以上の良好な抵抗率を確認した。また、福井大のプロセスラインを用いて、電子線露光によるサブμmゲート長をもつGaN-HEMTを試作し、良好な直流特性と小信号特性を確認した。特に、MOSゲート素子にて、ショットキーゲートHEMTより優れた高周波特性を確認した。さらに準ミリ波帯(24 GHz)にて入出力パワー特性の評価が可能なロードプル評価系を構築した。24 GHzにて動作確認を行い、現在試作中のHEMT素子に期待される出力を得るための入力電力印加が可能であることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度は、まず半絶縁性GaN基板の育成を担当する山口大において、GaN基板の抵抗率低下の原因となるドナー不純物元素(Si,O)の濃度を低下させ、代わりに不純物としてFeを添加した2インチ径のGaN基板の成長を進めた。デバイス試作に先立ち、GaN基板の抵抗率評価を行い、直流での電流電圧測定から2E+9~8E+9 Ωcmの抵抗率を確認した。また、福井大所有のエピタキシャル装置を用いてAlGaN/GaNヘテロ接合を成長するとともに、福井大プロセスラインを用いて、サブμm長さのゲート長をもつ高周波HEMT(ゲート幅は100μm)の試作を行った。昨年度はゲート長が1.5μmのHEMTにおいて、ショットキーゲートHEMTに比較してMOS-HEMTの方が優れた高周波特性(高いfTとfmax)を示すことを示したが、今年度は同様の傾向をサブμmゲート長のGaN-HEMTにおいても確認することができた。現在は、実際に高周波パワー特性の評価が可能なマルチゲートフィンガー構造をもつゲート長0.2μm高周波GaN-HEMTのマスクの設計を進めている。準ミリ波帯評価に関しては、24GHzにてGaN-HEMT増幅器の基本特性である入力電力と出力電力の関係を評価できるロードプル評価系の構築を進めた。新規に入力用のドライブアンプ(最大出力10W)を新調し、信号発生器と入出力整合用オートチューナとを合わせてロードプル評価系を構成した。同時にこの評価系には、入力部と出力部の電力測定用のパワーメータ、電力を一定割合で分配する方向性結合器、50Ω終端用の負荷抵抗を組み込んだ。実際にパワー評価システムとして入出力電力測定系の動作確認を行い、現在試作中のゲート幅400μm級のGaN-HEMTのドライブに必要な入力電力水準として2Wまでの電力印加が可能であることを確認した。
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今後の研究の推進方策 |
過去2年間の活動を通して、GaN-HEMT素子の試作に必要な半絶縁性GaN基板の入手とその抵抗率と破壊耐圧の関係を評価した。この半絶縁性GaN基板の上に、AlGaN/GaNエピを成長するためのエピタキシャル装置(MOCVD装置)を整備し成長条件を確立した。またサブミクロンゲートを形成するための電子線露光プロセス条件を検討し、全工程を通してデバイスを作製するプロセスラインの整備を完了した。また現在設計中のマルチゲートフィンガー構造のHEMTテストデバイス試作用の露光マスクが完成すれば、いよいよ準ミリ波帯で動作する高出力GaN-HEMTの試作を開始できる。R3年度の前半は、この新マスクを用いたHEMTデバイスの試作に注力する。基本デバイス構造としては、当初はショットキーゲート (SG-) HEMTを基本に考えていたが、R2年度の検討においても、SiN膜やAl2O3膜をゲート絶縁膜に用いたMOS-HEMTが高利得特性を示すことが確認されたため、SG-HEMTとMOS-HEMTの両方について試作を進める予定である。ゲート長については最小寸法を0.2μmとして、0.3μmと0.5μmについても検討する予定である。高周波特性評価については、ネットワークアナライザとオンウェハプローバーを用いてSパラメータ測定を行うとともに、構築したロードプル評価系を用いて準ミリ波帯での入出力特性を評価する。特に、オートチューナを用いて負荷インピーダンスを変化させ、利得と出力の両方が最大化される最適マッチング条件を決定する。デバイス試作は複数回実施し、最終目標10Wの出力達成をめざす。もし目標性能が達成出来ない場合は、その原因を考察するとともに達成できる条件の解明に努める。
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