研究課題/領域番号 |
19H00767
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
渡部 平司 大阪大学, 工学研究科, 教授 (90379115)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 窒化ガリウム / パワーデバイス / MOS構造 / 界面反応制御 |
研究実績の概要 |
窒化ガリウム(GaN)は、次世代のパワーデバイス材料として注目を集めている。研究代表者は、絶縁膜/GaN系半導体の界面設計に取り組み、伝導帯近傍の界面準位密度を低減し、超高品質なGaN MOS構造を実現している。この成果は極薄GaOx界面層の挿入によって達成されたが、その機構解明には至っていない。また価電子帯側には未だ多くの欠陥準位が存在し、正常な正孔蓄積は報告例が無い。本研究では、絶縁膜/GaN系半導体ヘテロ界面欠陥の物理的な起源を解き明かすと共に、界面欠陥やGaN基板への欠陥導入を伴わない絶縁膜形成技術の構築を目指している。 昨年度は、Siデバイスの欠陥終端技術として用いられている水素雰囲気アニールがGaN MOS構造に対しては致命的な問題を引き起こす事を明らかにした。当該年度は水素アニールで生じる正孔捕獲サイトの密度や分布、さらにはGaOx界面層膜厚との相関関係を詳細に調べた。その結果、GaOx層の水素還元で電気的な欠陥が生成される為、過剰なGaOx界面層成長はGaN MOSデバイスの高品質化には好ましくない事を明らかにした。これらの知見に基づいて、熱処理温度や処理雰囲気を最適化する事で、還元反応による欠陥生成を抑えつつ、水素アニールによるMOS構造中の欠陥終端の効果を引き出す事に成功した。一方、価電子帯近傍の欠陥低減手法として絶縁膜/p-GaN界面にAlGaN層を挿入した積層構造の電気特性を評価した。AlGaN/GaN界面で十分な価電子帯オフセットを確保出来なかった為に正孔蓄積の観測には至らなかったが、MgドープGaNの活性化がAlGaNキャップ層によって妨げられる現象を新たに見出した。これは、AlGaN/GaN界面に生じた2次元電子ガスが膜中の水素脱離を妨げた結果、Mg-H複合体形成に伴うp型ドーパントの不活性化を解消できなかった為であると理解できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
GaN MOSデバイスの信頼性評価に関する成果の論文掲載(JJAP)に加え、水素アニールに伴うGaOx界面層の還元反応によって引き起こされる正孔トラップ生成に関するレター論文発表(APEX)が順調に進んでいる。また、GaN MOS界面の還元反応を詳細に評価する事で、電荷トラップの問題を回避しつつ、MOS構造中の欠陥を水素終端可能なプロセス設計についても研究が順調に進展しており、国際会議での成果発表とフルペーパー執筆の準備が進んでいる。さらに、AlGaN/GaN界面の2次元電子ガスがMgドープGaN層の活性化に及ぼす影響を明らかにする事ができた。当該成果は当初予想していなかったものであり、国内会議での成果発表を当該年度中に完了し、今年度前半のレター論文投稿を予定している。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度は、GaN MOSデバイスの実用化に向けて最重要課題となるであろう荷電子帯近傍の電気的欠陥の素性解明に取り組みたい。その為には、MgドープGaN層の活性化プロセスを十分に理解・制御して、絶縁膜/GaN界面への正常な正孔蓄積の可否、さらにはMOS界面での正孔伝導の可能性を探る。加えて、Mg活性化に際して表面の熱安定性に優れた窒素極性面GaN基板上のMOS構造形成と、その性能評価についても昨年度後半から基礎検討を開始しており、2021年度はさらに詳細な実験を積み重ね、研究成果を発信したい。
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