研究課題/領域番号 |
19H00768
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
喜多 隆 神戸大学, 工学研究科, 教授 (10221186)
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研究分担者 |
原田 幸弘 神戸大学, 工学研究科, 助教 (10554355)
朝日 重雄 神戸大学, 工学研究科, 特命助教 (60782729)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 太陽電池 / 量子ドット / バンド内光学遷移 / 赤外光吸収 |
研究実績の概要 |
ダイオードデバイスの真性層に量子ナノ構造(量子ドットを挿入したヘテロ界面)を内包するシンプルな構造は強いバンド内光学遷移を示すと期待でき、次世代の光電変換デバイス構造(太陽電池構造)として有望である。本研究では、p型とn型に挟まれたダイオード構造の真性層に、AlGaAs/GaAsヘテロ界面にInAs量子ドットを挿入した量子ナノ構造を作製し、電子のみを蓄積したヘテロ界面において量子ドットによって増強されたバンド内光吸収を実現する。そのために、電子密度を制御した量子ドットにおける局在表面プラズモン形成によって近赤外および中赤外領域における光アンテナ効果を実証する。これら一連の成果を応用して、ヘテロ界面において価電子バンド-伝導バンド間光学遷移とバンド内光学遷移の連続した2段階の遷移による電子のエネルギーをアップコンバージョン実現する。本年度の以下のように実施した。 (1)量子ナノ構造の作製と基礎光学特性評価:実績がある分子線エピタキシー技術を利用して、GaAs(001)基板上にAlGaAs/GaAsヘテロ界面にInAs量子ドットを挿入した量子ナノ構造を内包するダイオード構造を作製する。これらの量子ナノ構造について現有のフォトルミネッセンス分光システムとフォトルミネッセンス励起スペクトル測定システムを駆使して、量子ドットの電子準位およびバンド内に形成される準位を光電流スペクトルから明らかにした。 (2)バンド内光学遷移分極の制御:バンド内光学遷移強度は、光電場で誘起される電子分極の大きさと遷移始状態の電子占有率に比例する。初年度はメタルドットを仮想して局在表面プラズモン形成による近赤外~中赤外領域における光アンテナ効果を理論的に予測した。その結果、量子ドット中の電子密度によって共鳴波長を制御することを見出し、中赤外域での応答波長制御特性を確認することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
バンド内光学遷移分極の制御において、本研究提案では電子で満たされた量子ドットの局在プラズモン共鳴利用を提案している。初年度はその理論的な予測を実施したところ予想以上に大きな制御性を実現できることが明らかになった。計算では、量子ドットのサイズ、密度による光学応答への影響を明らかにするため当初予定していたメタルドットだけでなく半導体ドットに電子密度を制御した状態で局在表面プラズモン形成を理論実証することに成功した。近赤外~中赤外領域におけるプラズモン形成による光アンテナ効果は高感度な中赤外域での応答波長制御特性を実現する上で極めて重要な成果である。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度は以下のように研究を実施して電子で満たされた量子ドットを利用したバンド内光学遷移分極の制御および光吸収係数の定量評価を実施することによってデバイス作製に向けた基礎特性を明らかにする。具体的には以下のとおりである (1)量子ナノ構造の作製と基礎光学特性評価:実績がある分子線エピタキシー技術を利用して、GaAs(001)基板上にAlGaAs/GaAsヘテロ界面にInAs量子ドットを挿入した量子ナノ構造を内包するダイオード構造を作製する。本年度はSi変調ドーピングによって電子密度を制御した量子構造を作製する。これらの量子ナノ構造について現有のフォトルミネッセンス分光システムとフォトルミネッセンス励起スペクトル測定システムを駆使して、サイズが制御された量子ドットの電子準位を明らかにする。特にバンド内に形成される準位を詳細に調べる。 (2)バンド内光学遷移分極の制御:バンド内光学遷移強度は、光電場で誘起される電子分極の大きさと遷移始状態の電子占有率に比例する。量子ドットのサイズ、密度による光学応答への影響を明らかにするため電子で満たされた量子ドットにおけるプラズモン共鳴特性を明らかにして中赤外領域における光アンテナ効果を理論的に予測する。 (3)光吸収係数の定量評価とアップコンバージョン光電流の最大化:デバイスを試作して光近赤外から中赤外に広がる広い波長範囲で光応答特性を明らかにし、ヘテロ界面電子濃度に依存すると予想されるバンド内光学遷移の吸収率を定量的に明らかにする。
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