研究課題/領域番号 |
19H00776
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
岡部 聡 北海道大学, 工学研究院, 教授 (10253816)
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研究分担者 |
北島 正章 北海道大学, 工学研究院, 助教 (30777967)
佐藤 久 北海道大学, 工学研究院, 教授 (80326636)
押木 守 北海道大学, 工学研究院, 准教授 (90540865)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 一槽式生物電解セル(MEC) / アンモニア酸化 / バイオ燃料電池(MFC) / 下水処理 |
研究実績の概要 |
嫌気性アンモニア酸化(Anammox)プロセスは、省エネ型窒素除去プロセスとして工場排水や嫌気性消化脱水ろ液処理などに適用が始まっているが、都市下水処理(メインストリーム)への適用は一向に進んでいない。都市下水メインストリーム処理への適用の鍵は、前段の部分硝化(NH4+をNO2-まで酸化する)プロセスの安定化・高効率化である。 そこで本研究では、前段に有機物除去を担うバイオ燃料電池(MFC)を設け、MFCで発生する電圧を用いてMECアノード電極電位を制御することで、アンモニア酸化細菌(AOB)がアノード電極を電子受容体としてNH4+をNO2-まで酸化し、Anammox細菌が生成されたNO2-とNH4+を窒素ガス(N2)へ変換するMFC駆動型部分硝化(PN)-Anammox 生物電解セル(MEC)システムを開発することを目的とした。 本年度は、研究開発項目①として提示した、アンモニア酸化細菌(AOB)は、アノード電極を電子受容体としてNH4+をNO2-へ酸化できるか?さらに、MFCを部分硝化-Anammox MECの補助電源として用いることは可能か?について検討した。一槽式生物電解セル(MEC)を構築し、活性汚泥を植種し実際の都市下水を用いて連続運転を行った。まず、ポテンシオスタットを用いてMECアノード電極の標準還元電位を0-1.2 V (vs SHE)の範囲に制御し、NH4+酸化速度および発生電流量を測定した。その結果、0.4 V (vs SHE)で最大NH4+酸化速度103 ± 52 g-NH4+-N m-3 d-1) 、最大全窒素除去速度69 ± 37 g-TN m-3 d-1を達成した。また、バイオ燃料電池(MFC)の低出力電圧を昇圧・増幅・蓄積するパワーマネージメントシステム(PMS)を開発し、MFC出力電圧約0.4 Vを最大99 Vまで増幅することに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究開始から本年度までの2年間で、(1)一槽式生物電解セル(MEC)を用いた生物電気化学的NH4+除去に関する論文、(2)安定した都市下水処理と発電を同時に可能とする空気カソードバイオ燃料電池の構築に関する論文、(3)バイオ燃料電池の低出力電圧を昇圧・増幅・蓄電するパワーマネージシステムの開発に関する論文を発表できた。
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今後の研究の推進方策 |
今後は以下の項目を検討する。 研究開発項目①として提示した、アンモニア酸化細菌(AOB)は、アノード電極を電子受容体としてNH4+をNO2-へ酸化できるか?さらに、MFCを部分硝化-Anammox MECの補助電源として用いることは可能か?についてさらに検討を行う。特に、バイオマス無添加系や開回路のコントロール実験系を準備し、アンモニア酸化細菌による生物学的NH4+酸化であることを確認する。これまでの実験では外部電圧としてポテンシオスタットを用いたが、前段の有機物除去を目的としたMFCで発生する電圧を用いて、MECアノード電極の電位を制御することが可能か否か検証する。MFCとMECを結合し、可変抵抗器により外部抵抗を変化さMECアノードの電極電位を変化させ、窒素除去効率を測定しシステムの最適化を図る。 研究開発項目③で提示したように、部分硝化-Anammox MECで生じる窒素除去メカニズムを解明する。本研究のMEC内で生じる窒素除去メカニズムを解明するためには、反応を担う微生物菌叢を明らかにしなければならない。また、アノード呼吸は不溶性の電子受容体を用いる呼吸であり、どのようにアンモニア酸化細菌がアノード電極に電子を渡しているのかを解析する。
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