研究課題/領域番号 |
19H00781
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
加藤 準治 名古屋大学, 工学研究科, 教授 (00594087)
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研究分担者 |
北根 安雄 京都大学, 工学研究科, 准教授 (10444415)
小橋 真 名古屋大学, 工学研究科, 教授 (90225483)
干場 大也 名古屋大学, 工学研究科, 助教 (80847038)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | トポロジー最適化 / 積層造形 / 3Dプリンタ / インフィル構造 / CFRP |
研究実績の概要 |
2019年度は,まずインフィル構造に関する最新の研究報告の論文調査を行った.次に,インフィル構造供試体の造形および実験をそのまま再現し,メカニズムの解明に焦点を充てて考察した.その結果,インフィルという多孔質構造体を埋め込むことによって,部材の細長比を小さくし,座屈現象を遅らせる効果があることがわかった.また,インフィル構造の実験を再現する数値シミュレーションを実装した.この段階では,自作の有限要素法のプログラムを用いて有限変形解析を行った.実験で構造不安定となった変形モードと数値シミュレーションで不安定となった変形モードを比較すると非常に近い挙動が示されており,しかも不安定となる荷重強度はシミュレーションとほぼ一致していることがわかった.また,造形時に生じる材料配置と物性値のばらつき,外荷重の角度および大きさ,載荷位置のずれなどの「不確かさ」については,それを想定しながら実験を行った.最後に,それぞれの実験結果を照らし合わせ,力学的挙動の差異を明確にした. さらに,「不確かさ」については,集中荷重と等分布荷重の「角度」が変動することを想定した線形弾性体のトポロジー最適設計法をすでに開発しているが,これを3次元の有限変形力学挙動を考慮したものに拡張した.これにより,より現実的な構造設計が行えるようになった.なお,荷重が不確かな条件下でこのような非線形挙動を考慮したトポロジー最適化の研究は,世界的に注目されているもののいまだ確立された方法はない.よって,これを成功させることの学術的価値は極めて高いと考えている.最後に,実装したプログラムを統合し,「インフィル構造の高耐荷力性能を安定的に向上させるための最適設計法」のプログラムを完成させた.それらについては,すでに学会発表し,論文も投稿している.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究は,連続繊維3Dプリンターを考慮した最適設計,多孔質構造体の最適設計,インフィル構造,ロバスト設計等,学銃的にも実用的にも関心の高い研究テーマによって構成されているが,それぞれのテーマが多角的に進められ,いずれも相互に関連できるように全体計画を推し進めている.すなわち,ひとつの手法が完成すれば,他のテーマでも活用できるよう緻密に全体計画を練っており,これが良い方向に進められている理由と思われる
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今後の研究の推進方策 |
3D-printing(以下,3DPに略)によるCFRP造形は我々が想定していた以上に造形精度に優れ,また造形方法によっては繊維材の平均的な材料強度が増加するという新たな知見を実験によって得ている.そのため,R2年度は当初計画にはなかったが,3DP‐CFRP材の限界性能を見極めるための基本的な検証を追加で行う. 一方,数値計算に関しては,3DP‐CFRP部材の力学シミュレーションのために,単純なTsai-Wu材料モデルをコード化する.そこから実験との差異を確認しながら3DP特有の積層方向の異方性や層間剥離や強度を考慮して3DP-CFRP用の新たな材料モデルを構築する.特に,繊維材の引張りと圧縮方向によって強度が異なることから,それを考慮できるように検討する. 他方,高速フーリエ変換(FFT)などを適用したFFT均質化法と呼ばれる特殊な方法を活用して材料微視構造のトポロジーを高速で最適化するアルゴリズムを提案する.高速化された有限要素法に基づくトポロジー最適化法と本手法の比較を行い,提案手法の性能を評価する.さらに,不確かな荷重の変動によって一部の部材が損傷した後でも構造全体の挙動が急激に変化しない,ロバスト性に優れた最適形状を見出すための3次元トポロジー最適設計法の開発にも挑戦する.
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