波浪を考慮した大気海面境界素過程の解明と沿岸災害への影響評価

2020 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 19H00782
• 研究機関: 京都大学
• 研究代表者: 森 信人 京都大学, 防災研究所, 教授 (90371476)
• 研究分担者: 竹見 哲也 京都大学, 防災研究所, 教授 (10314361) ; 藤木 峻 国立研究開発法人海上・港湾・航空技術研究所, 港湾空港技術研究所, 主任研究官 (10735004) ; 渡部 靖憲 北海道大学, 工学研究院, 教授 (20292055) ; 二宮 順一 金沢大学, 地球社会基盤学系, 助教 (20748892) ; 馬場 康之 京都大学, 防災研究所, 准教授 (30283675) ; 金 洙列 鳥取大学, 工学研究科, 助教 (60508696) ; 志村 智也 京都大学, 防災研究所, 准教授 (70789792) ; 内山 雄介 神戸大学, 工学研究科, 教授 (80344315)
• 研究期間 (年度): 2019-04-01 – 2023-03-31
• キーワード: 大気海洋境界過程 / 波浪 / パラメタリゼーション / 沿岸災害

研究実績の概要

本年度は，波浪境界層を考慮して大気海洋境界過程のパラメタリゼーションの定量化・汎用化とこれを用いた沿岸災害等の数値モデルへの影響評価を実施し，最大クラスの高潮・高波想定，大気や海洋の循環場の高精度化を行った．具体的には，(A) 大気海洋境界過程の現地観測，(B) 大気海洋境界面の素過程の解明と定量化，(C) 高潮・高波・台風の極端現象，大気・海洋の循環場への影響評価の研究を実施した．各項目の実施内容は以下の通りである．
項目A 「大気海洋境界過程の現地観測」：大気海洋境界過程定量化のための詳細な大気・海洋の観測，パラメータ空間をカバーする広範囲のデータ収集・解析を実施した．項目Bにおける大気海洋境界面の素過程の解明・パラメタリゼーションのため，低～高風速，風波・うねりの状態等，広いパラメータ空間をカバーする現地観測データセットの整備を行った．このため，和歌山県白浜において大気・海洋観測塔を用いた観測を実施した．
項目B 「大気海洋境界面の素過程の解明と定量化」：運動量交換係数，熱交換係数，海面粗度，砕波乱流の4つのパラメタリゼーションにつながる素過程の理論構築を行った．海面境界過程を波浪境界層理論をもとに風速と波浪の方向スペクトルを説明変数として考え，運動量・熱交換係数，海面粗度高さについて理論的な枠組みの再構築を試みた．波浪方向スペクトルをもとに運動量・熱交換過程，鉛直代表長さスケールをパラメタライズする手法についても検討した．
項目C 「高潮・高波・台風の極端現象，大気・海洋の循環場への影響評価」：項目Bで得られたパラメタリゼーションを用い，高潮・高波・台風の極端現象，10年スケールの大気・海洋の大循環場等への影響について定量的に検討した．このため，現在の沿岸災害・環境評価の主軸の数値モデルである領域気象モデル，高潮モデル，波浪モデル，全球気候モデル，海洋モデルの開発を進めた．

現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

コロナウイルスにより２０２０年度の観測に遅れが生じたが，繰越により遅れを取り戻した．

今後の研究の推進方策

観測のスケジュールに遅延をリカバーリーしつつ，数値モデル開発を加速する．

研究成果

• [雑誌論文] Future projection of maximum potential storm surge height at three major bays in Japan using the maximum potential intensity of a tropical cyclone (2021)
  • 著者名/発表者名: Mori, N., N. Ariyoshi, T. Shimura, T. Miyashita, J. Ninomiya
  • 雑誌名: Climatic Change 巻: 164 ページ: 25
  • DOI: 10.1007/s10584-021-02980-x
  • 査読あり
• [雑誌論文] Identification of coral spawn source areas for restoration of the Sekisei Lagoon and the Kuroshio downstream region (2021)
  • 著者名/発表者名: Takeda, N., Kashima, M., Odani, S., Uchiyama, Y., Kamidaira, Y. and Mitarai, S.
  • 雑誌名: Scientific Report 巻: 11 ページ: 6963
  • DOI: 10.1038/s41598-021-86167-5
  • 査読あり
• [雑誌論文] Bubble drag in electrolytically generated microbubble swarms with bubble-vortex interactions (2021)
  • 著者名/発表者名: Yasunori Watanabe, Haruhi Oyaizu, Hisashi Satoh, Yasuo Niida
  • 雑誌名: International Journal of Multiphase Flow 巻: 136 ページ: 103541
  • DOI: 10.1016/j.ijmultiphaseflow.2020.103541
  • 査読あり
• [雑誌論文] ENSO impacts on global directional wave power and coastal hazards (2020)
  • 著者名/発表者名: Oderiz, I., R. Silva,T.R. Mortlock,N. Mori
  • 雑誌名: Journal of Geophysical Research, Ocean 巻: 125 ページ: e2020JC016464
  • DOI: 10.1029/2020JC016464
  • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
• [雑誌論文] Experimental reconstruction of extreme sea waves by time reversal principle (2020)
  • 著者名/発表者名: Ducrozet, G., F. Bonnefoy, N. Mori, M. Fink, A. Chabchoub
  • 雑誌名: Journal of Fluid Mechanics 巻: 884 ページ: A20
  • DOI: 10.1017/jfm.2019.939.
  • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
• [雑誌論文] Coastal Impact of super Typhoon Hagibis on greater Tokyo and Shizuoka areas, Japan (2020)
  • 著者名/発表者名: Shimozono, T., Y. Tajima, K. Kumagai, T. Arikawa, Y. Oda, Y. Shigihara, N. Mori, T. Suzuki
  • 雑誌名: Coastal Engineering Journal 巻: 62 ページ: 129-145
  • DOI: 10.1080/21664250.2020.1738620
  • 査読あり
• [雑誌論文] Impacts of Ocean Wave-Dependent Momentum Flux on Global Ocean Climate (2020)
  • 著者名/発表者名: Shimura T., M. Hemer, A. Lenton, M.A. Chamberlain and D. Monselesan
  • 雑誌名: Geophysical Research Letters 巻: 47 ページ: e2020GL089296
  • DOI: 10.1029/2020GL089296
  • 査読あり / 国際共著
• [雑誌論文] The influence of moving speeds, wind speeds, and sea level pressures on after-runner storm surges in the Gulf of Tonkin (2020)
  • 著者名/発表者名: Nguyen Ba Thuy, Sooyoul Kim, Tran Ngoc Anh, Nguyen Kim Cuong, Pham Tri Thuc, Lars Robert Hole
  • 雑誌名: Ocean Engineering 巻: 212 ページ: 107613
  • DOI: 10.1016/j.oceaneng.2020.107613
  • 査読あり / 国際共著
• [雑誌論文] Effects of wave streaming and wave variations on nearshore wave-driven circulation (2020)
  • 著者名/発表者名: Wang,P., McWilliams, J.C., Uchiyama, Y., Chekroun, M.D. and Yi, D.L
  • 雑誌名: Journal of Physical Oceanography 巻: 50 ページ: 3025-3041
  • DOI: 10.1175/JPO-D-19-0304.1
  • 査読あり / 国際共著
• [雑誌論文] Topographic and coastline influences on surf eddies (2020)
  • 著者名/発表者名: Akan, C., McWilliams, J.C. and Uchiyama,Y.
  • 雑誌名: Ocean Modelling 巻: 147 ページ: 101565
  • DOI: 10.1016/j.ocemod.2019.101565
  • 査読あり / 国際共著
• [雑誌論文] Development of a numerical marine weather routing system for coastal and marginal seas using regional oceanic and atmospheric simulations (2020)
  • 著者名/発表者名: Kurosawa, K., Uchiyama, Y., and Kosako, T.
  • 雑誌名: Ocean Engineering 巻: 195 ページ: 106706
  • DOI: 10.1016/j.oceaneng.2019.106706
  • 査読あり
• [雑誌論文] Wave packet focusing in shallow water (2020)
  • 著者名/発表者名: Yasunori Watanabe, Yusuke Tsuda, Ayumi Saruwatari
  • 雑誌名: Coastal Engineering Journal 巻: 62 ページ: 336-348
  • DOI: 10.1080/21664250.2020.1756033
  • 査読あり
• [雑誌論文] 海洋表層混合を考慮した全球大気・波浪・海洋結合モデルによる台風強度特性の評価 (2020)
  • 著者名/発表者名: 浦野 大介, 森 信人, 志村 智也, 水田 亮
  • 雑誌名: 土木学会論文集B2(海岸工学) 巻: 75 ページ: I_1117-I_1122
• [雑誌論文] 台風熱収支に対する海洋表層混合の砕波パラメタリゼーションの応答 (2020)
  • 著者名/発表者名: 髙木 雅史, 森 信人, 二宮 順一
  • 雑誌名: 土木学会論文集B2(海岸工学) 巻: 75 ページ: I_253-I_258
• [雑誌論文] 方向スペクトルの多峰性を考慮したスペクトル型波浪モデルの精度評価 (2020)
  • 著者名/発表者名: 藤木 峻, 森 信人, 川口 浩二, 田村 仁
  • 雑誌名: 土木学会論文集B2(海岸工学) 巻: 75 ページ: I_181-I_186
• [雑誌論文] 台風Haiyanの高解像度計算における海洋・波浪の感度 (2020)
  • 著者名/発表者名: 二宮 順一, 竹見 哲也, 森 信人
  • 雑誌名: 土木学会論文集B2(海岸工学) 巻: 75 ページ: I_175-I_180
• [雑誌論文] 波浪結合全球大気気候モデルによる波向－風向のずれを考慮した海面抵抗係数の台風統計量への系統的影響評価 (2020)
  • 著者名/発表者名: 志村 智也, 森 信人, 浦野 大介, 水田 亮
  • 雑誌名: 土木学会論文集B2(海岸工学) 巻: 75 ページ: I_151-I_156
• [学会発表] 海洋表層混合を考慮した全球大気・波浪・海洋結合モデルによる台風強度特性の評価 (2020)
  • 著者名/発表者名: 浦野 大介
  • 学会等名: 土木学会海岸工学講演会
• [学会発表] 台風熱収支に対する海洋表層混合の砕波パラメタリゼーションの応答 (2020)
  • 著者名/発表者名: 髙木 雅史
  • 学会等名: 土木学会海岸工学講演会
• [学会発表] 方向スペクトルの多峰性を考慮したスペクトル型波浪モデルの精度評価 (2020)
  • 著者名/発表者名: 藤木 峻
  • 学会等名: 土木学会海岸工学講演会
• [学会発表] 台風Haiyanの高解像度計算における海洋・波浪の感度 (2020)
  • 著者名/発表者名: 二宮 順一
  • 学会等名: 土木学会海岸工学講演会
• [学会発表] 波浪結合全球大気気候モデルによる波向－風向のずれを考慮した海面抵抗係数の台風統計量への系統的影響評価 (2020)
  • 著者名/発表者名: 志村 智也
  • 学会等名: 土木学会海岸工学講演会