研究課題/領域番号 |
19H00783
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
田中 周平 京都大学, 地球環境学堂, 准教授 (00378811)
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研究分担者 |
高田 秀重 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (70187970)
古米 弘明 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 教授 (40173546)
鈴木 裕識 国立研究開発法人土木研究所, 土木研究所(つくば中央研究所), 研究員 (20762272)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | マイクロプラスチック / 水循環系 / 路面塵埃 / 下水処理場 / マイクロファイバー |
研究実績の概要 |
各試料中の微小マイクロプラスチックの分析方法の開発では、下水、下水汚泥、河川表層水、水道水中の10μmのマイクロプラスチックを効率的に分析するための、FT-IRライブラリの作成、夾雑物除去、前処理方法の開発などを行った。染色法によるマイクロファイバーの分析方法の開発では、落射型蛍光顕微鏡を用いた蛍光染色検出法の適用可能性の検討を進めており、特に、下水試料中に存在する夾雑物の除去方法を検討した。 道路面での存在量と降雨による洗い流し量の把握では、東京港湾内の運河部において、降雨後と晴天時に採水調査を実施した。降雨後試料については、下水マーカーの糞便指標微生物や直鎖アルキルベンゼンとコプロスタノールの分析を行い越流した下水の影響を受けていることを確認した。また、調布市内の高速道路からの降雨時道路排水、晴天時の流入水と二次処理放流水を採取して、10μum-5mmのマイクロプラスチックの分析を行った。また、世田谷区において道路排水の雨水浸透施設(雨水枡)内の堆積物を採取して、マイクロプラスチック分析のための有機物分解と比重分離の前処理を行った。 実験室に洗濯機を設置し、繊維状のマイクロプラスチックの排出量実験を行った結果を日本水環境学会で口頭発表した(パルセーター型洗濯機による繊維状マイクロプラスチックの排出量実験)。また、マイクロプラスチックへの吸着が懸念されるペルおよびポリフルオロアルキル物質の挙動調査を水道水源で行った結果を環境衛生工学研究に発表した(沖縄県の水道水源とその浄水処理工程におけるペルおよびポリフルオロアルキル物質(PFASs)の挙動調査)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
下水、下水汚泥、河川表層水、水道水中の10μmのマイクロプラスチックを効率的に分析するための、FT-IRライブラリの作成、夾雑物除去、前処理方法の開発などを行っており、細かな改善方法が分かってきた。本レベルになると室内環境からの曝露の影響も懸念されるため、簡易のクリーンルームを作成し、PM2.5レベルを通常の実験室環境の20分の1まで低下させた状態で実験を行っている。 生下水、下水処理水、道路排水、河口域試料(晴天時、降雨後)を分析し、水域へ負荷されるマイクロプラスチックについては道路排水の寄与が大きいことを示した。道路排水中のマイクロプラスチックの測定、受水域の降雨時試料中のマイクロプラスチックの測定は世界的にも、測定例が限られており、新規性の高いデータであり、さらに下水マーカーによる雨天時越流の寄与の判定を併用した研究はこれまでにないユニークなものである。現在国際誌に投稿準備中である。ただし、微細マイクロプラスチックの分析方法の確立に8ヶ月要し、環境試料の分析が各媒体1-2試料であったため、次年度以降試料数を増やしていく必要がある。 都内の水再生センターからの雨天時流入下水試料の入手ができていないが、道路排水由来のマイクロプラスチックの分析のため、道路排水の雨水浸透施設(雨水枡)内の堆積物を採取して前処理を行った。 微小マイクロプラスチックの計測手法の一つとして、繊維状マイクロプラスチックを計測する体制が整った。特に、手順の簡略化を行い、導入容易性を高めた。他の計測技術との関係性の把握やクロスチェックを丁寧に進める必要があるが、一次スクリーニングを目的とした手法として提案できる状況である。一方で、実試料へ適用できた件数が限られたため、次年度以降に試料数を増やしてデータの蓄積を進める必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
イメージングFTIRや量子カスケードレーザーと高速スキャン光学系による分子イメージング技術LDIRを用いて、10μm未満の極微小マイクロプラスチックを分析する手法の開発をさらに進めていく。 道路排水と下水の試料については1回の観測に基づくものなので、次年度以降は道路排水と下水の観測頻度を挙げて、議論の信頼度を上げて、推定の幅を小さくしていく。また、東京大学グループの道路排水の雨水浸透施設(雨水枡)内の堆積物の分析を行い、道路排水のマイクロプラスチック組成の地域的変動の把握を行う。 下水処理場における処理効果を把握するために、現地調査を行い、検討を進めた蛍光染色検出法を適用して存在実態データを取得する。調査では、汚泥処理系を含めて試料を採取して、下水処理場全体における挙動を検討する。また、下水処理場放流先の河川環境における調査を実施して、排出源としての下水処理場の寄与を検討する。
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