研究課題/領域番号 |
19H00783
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
田中 周平 京都大学, 地球環境学堂, 准教授 (00378811)
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研究分担者 |
鈴木 裕識 岐阜大学, 工学部, 准教授 (20762272)
古米 弘明 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 教授 (40173546)
高田 秀重 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (70187970)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | マイクロプラスチック / 水循環系 / 路面粉塵 / 繊維状マイクロプラスチック / 雨天時 |
研究実績の概要 |
高野川における雨天時流出調査を2回(総降水量8mmと24mm)実施し、10um~5mmのMPsを時系列的に測定した結果、河川流量のピークの2時間前から10~300umの微小MPsが流出していることが分かった。また総負荷量は晴天時と比較し、8mmの降雨で39倍、24mmの降雨で1,750倍であり、雨天時の洗い流しの影響が大きく、降雨強度により差が出ることが示された。 多摩川支流の野川集水域を対象に、道路粉塵3箇所、高速道路排水6降雨15試料、一般道路排水3降雨4試料、河川水5降雨1晴天時11試料中のMP(10um-5mm)の顕微FTIR分析を行い、タイヤ摩耗物等の自動車由来のMPが、雨天時表面流出で河川へ流入・輸送される過程の重要性を定量的に明らかにした。河川水へは洗濯排水に含まれる繊維状MPが雨天時越流下水として負荷されることも観測した。粒子個数で見ると、いずれの媒体でも90%以上が300um以下であり、粒子毒性における微細MPの重要性が示された。一方、粒子重量で見ると、大きなMPの寄与は大きくなり、増水時の河川水等300um以上のMPが全粒径のMP重量の50%以上を占めた。MPに含有される添加剤に起因する影響を考える場合は、大きなMPの寄与が重要であることが示された。 開発してきた繊維状MPsの分析方法を適用し、2箇所の下水処理場と7箇所の浄化槽の調査を実施した。調査結果をもとに、1人1日あたりのMPs排出量を推計したところ、浄化槽からの排出量は下水処理場の約25倍多い結果が得られた。また、調査対象処理区域では浄化槽の処理人口は下水処理場の1/28程度である中、当該処理区域からの総排出量では浄化槽からの排出量が下水処理場をやや上回る結果となった。各戸の浄化槽から面源的に公共用水域に排出される繊維状MPsについて、さらなる検討が必要であることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
10um以上のMPsについて、雨天時の河川水を時系列的に調査できるなど、予定通り順調に進展している。多岐に渡る試料を採取・分析し、つながりのある結果を得て、MPの動態イメージを描くことができた。調査対象で、これまでに調査事例がみられない浄化槽を追加することで、特に洗濯時に発生し生活排水に多く含まれることが想定される繊維状MPsについて、下水処理場以外の存在実態データを得ることができた。熱分解GC-MSの定量下限を下げることに成功したことから、路面塵埃中の1umのMPsについても、質量密度を分析することが可能となるなど、当初予定していた1umのMPsの分析方法の開発についてすでにクリアすることができている。
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今後の研究の推進方策 |
熱分解GC-MSにより道路塵埃中の1umのMPsの分析に成功している。本年度は、さらに分析対象を、雨天時路面排水、家庭排水、下水処理工程水、農業排水、工業廃水、河川水中のMPsに展開し、それぞれでの存在実態を把握して、各種MPsの環境運命を検討する。 今年度分析した試料について、添加剤等の有害化学物質の分析を行う。加えて、河床堆積物の採取・分析も行い、水環境中でのMPおよび関連化学物質の動態を3次元的なものに発展させていく。 昨年度までに改良した繊維状MPs検出方法により、効率的なMPsの存在実態データ取得ができている。引き続き都市水循環系に係わる環境試料中の存在実態データを蓄積する。特に、浄化槽での調査においては、水系での挙動に加えて、汚泥・廃棄物系への移動も含めて検討し、物質フローの把握を試みる。
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