研究課題/領域番号 |
19H00784
|
研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
藤原 章正 広島大学, 先進理工系科学研究科(国), 教授 (50181409)
|
研究分担者 |
張 峻屹 広島大学, 先進理工系科学研究科(国), 教授 (20284169)
力石 真 広島大学, 先進理工系科学研究科(国), 准教授 (90585845)
塚井 誠人 広島大学, 先進理工系科学研究科(工), 准教授 (70304409)
有尾 一郎 広島大学, 先進理工系科学研究科(工), 助教 (50249827)
清家 美帆 広島大学, 先進理工系科学研究科(国), 助教 (70757244)
坂田 桐子 広島大学, 人間社会科学研究科(総), 教授 (00235152)
神田 佑亮 呉工業高等専門学校, 環境都市工学分野, 教授 (60636463)
瀬谷 創 神戸大学, 工学研究科, 准教授 (20584296)
浦田 淳司 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 助教 (70771286)
吉井 稔雄 愛媛大学, 理工学研究科(工学系), 教授 (90262120)
嶋本 寛 宮崎大学, 工学部, 准教授 (90464304)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 相乗型豪雨災害 / 交通マネジメント / 緊急避難行動 / 復旧優先度決定システム / 短期交通需要推計 / モバイルブリッジ |
研究実績の概要 |
本研究課題は,今後も頻発することが見込まれる相乗型豪雨災害時の交通マネジメントのための理論再構築と社会への実装を行うことを目的とする。広島・呉・東広島を結ぶ交通ネットワークを対象として,被災直後から復興期までの過程を4つの復旧・復興段階に分け,行動論の立場 から主としてデータ収集,心理・行動分析,政策評価について基礎研究と応用研究を行う。開発した一連の手法をパッケージ化したソフトウェア「TMRescue」を完成させ,豪雨災害時および大規模イベント時に適用し,その実用性および汎用性を検証する。 2019年度に引き続き2020年度も、パッケージソフトTMRescue開発のための理論研究に取り組んだ。具体的には、 ①社会的ネットワークを考慮した緊急避難行動の予測手法の開発に関して、SNS経由で得られた外部情報(他者の動向や警報など)が避難行動に及ぼす影響を調べ,社会的ネットワークを考慮した意思決定モデルを構築し,時間・空間的特性の異なる政策シナリオのもとで緊急避難行動を予測した。 ②災害時パッシブデータに基づく短期交通需要・供給量推計手法の開発に関して、深層学習に基づく超短期予測を下敷きに,需要と供給を総合的にマネジメントする方法を開発し,災害時の道路パフォーマンス及び交通需要の推計精度を改善した。 ③時間・空間的集積を考慮した交通マネジメント施策の評価手法の開発に関して、①の出力を多段階始業時刻決定モデルに入力し,事業所の時間・空間的集積を社会的厚生水準に反映し,交通マネジメント施策の評価手法を構築した。 ④交通ネットワークの復旧優先度決定支援システムの開発に関して、災害直後に敷設効果が期待される緊急仮橋モバイルブリッジのネットワーク効果および敷設の優先順位を明らかにした。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2年間で完了する理論研究の2年度目にあたる。以下の目的に対して概ね90%程度の達成率であり、「おおむね順調に進展している」と判断した。 ①社会的ネットワークを考慮した緊急避難行動の予測手法の開発に関しては、計画通り、SNS経由で得られた外部情報(他者の動向や警報など)が避難行動に及ぼす影響を調べ,社会的ネットワークを考慮した意思決定モデルを構築し,時間・空間的特性の異なる政策シナリオのもとで緊急避難行動を予測した。 ②災害時パッシブデータに基づく短期交通需要・供給量推計手法の開発に関して、予定通り、深層学習に基づく超短期予測を下敷きに,需要と供給を総合的にマネジメントする方法を開発し,災害時の道路パフォーマンス及び交通需要の推計精度を改善した。 ③時間・空間的集積を考慮した交通マネジメント施策の評価手法の開発に関して、予定通り、①の出力を多段階始業時刻決定モデルに入力し、事業所の時間・空間的集積を社会的厚生水準に反映し、交通マネジメント施策の評価手法を構築した。ただし、自宅出発時刻選択モデルについては精度改善の余地が残った。 ④交通ネットワークの復旧優先度決定支援システムの開発に関して、ごく短時間で敷設可能なモバイルブリッジのネットワーク効果および敷設の優先順位を明らかにした。当初は大規模イベント時にあわせて交通マネジメント実験を実施し、復旧優先度決定支援システムの構築・検証を行う計画であったが、新型コロナウイルス感染症のため交通マネジメント実験を実施することができず、モバイルブリッジの敷設効果を定量化あうるシミュレーション研究に切り替えた。
|
今後の研究の推進方策 |
3年目に当たる2021年度は相乗型豪雨災害や大規模イベントを事例に、目的で掲げた4つの開発手法をパッケージ化したソフトウェアTMRescueの社会実装研究を行う。 ①タイムライン型避難支援アーカイブの構築に関して、タイムラインの考え方を援用し、土砂洪水氾濫被害に対応した避難支援アーカイブを構築する。1)避難関連情報発令、2)避難所の開設、3)事後避難の実態、4)避難所運営上の課題等に関して、被災自治体の行政担当者へヒアリングを行って、一連の行政側の対応と住民の反応等をアーカイブとして取りまとめる。また、被災者の意識や行動に関する自由回答形式のアンケート調査とSNSのテキストデータを取得し、機械学習手法の一つであるトピックモデルを適用して、住民避難の阻害要因を特定する。 ②災害時の動的交通情報提供システムの構築に関して、人々の円滑な移動や迅速な復旧・復興に貢献するために、災害発生後の公共交通運行の動的な交通情報提供システムを構築する。①-2)および①-3)で推計した交通需給量とバス配車計画を一元管理する「災害時輸送センター」をクラウド上に設置し、交通規制時の情報配信プラットホームを構築する。 ③時間・空間的集積を考慮した交通マネジメント施策の決定に関して、災害時に関係者が自由にアクセスできるオープンデータを作り、①-3)で構築した需給マッチング技術および需供均衡点の予測技術にAIを用いた公共交通情報提供技術を同期させて、被災後のTDM×TSMを実現する新たなサービスコンテンツを開発する。 ④交通ネットワークの復旧優先度決定支援システムを用いた施策の評価に関して、復旧優先度決定支援システムを相乗型豪雨災害の復旧・復興過程に適用し,道路区間の抽出,順位,交通容量の回復水準の妥当性について検証する。
|