研究課題/領域番号 |
19H00790
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
坂田 弘安 東京工業大学, 環境・社会理工学院, 教授 (80205749)
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研究分担者 |
山崎 義弘 国立研究開発法人建築研究所, 材料研究グループ, 主任研究員 (70644425)
松田 和浩 名城大学, 理工学部, 准教授 (80567397)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 戸建て木質住宅 / 木質耐力壁 / 木質制振住宅 / 耐力壁の性能劣化 / 制振設計法 |
研究実績の概要 |
地震による経済的損失を抑え,早期復興を実現するには,国民の生活基盤を支える戸建て木質住宅の耐震性向上は最優先課題の一つであり,継続使用性まで確保しなければならない.従来型の耐震構造では,継続使用性の確保までは困難であることが昨今の震災で明らかとなり,その対策として制振技術が注目を浴びている.近年は戸建て木質住宅用制振デバイスの研究開発が活発であり,高い性能を示すデバイスも市場に登場しているが,それらを木質住宅に対し適用するための汎用設計法が存在しないため,その普及が妨げられている. 本研究では,建物の継続使用性には構造体の損傷だけでなく,仕上げ材などの非構造体の損傷も影響することに着目し,地震により構造体・非構造体に生じる損傷の多寡と性能劣化・修復費用の関係を明らかにし,さらには制振デバイスによる損傷抑制効果を明示できる木質制振住宅の設計法を提案し,制振技術の健全な普及に貢献することを目的としている.以上のことを踏まえ,昨年度は以下の二つのことを実施した. 一つ目は,一昨年度に静的載荷実験により得た,内外装壁の損傷より経験最大層間変形角を予測する損傷表に対して,振動台実験による動的載荷によって壁の損傷評価を行い,損傷表の妥当性検証を行った. 二つ目は,動的解析により,複数回の地震動入力による耐力壁の耐力劣化及びエネルギー吸収性能劣化の確認をし,非構造体・制振デバイスを含む,木質制振架構の性能劣化挙動を把握した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は,一昨年度に行ったことを踏まえ,大きく二つのことに対して以下のような状況であるため,おおむね順調に進展していると判断した. 一つ目は,一昨年度に実施した内外装材を張った軸組工法木造壁の静的載荷実験と既往の研究のデータを併せて作成した非構造体の損傷より経験最大層間変形角を予想する損傷表を,動的載荷における非構造体の損傷の推移と照らし合わせることで,動的な変形により生じる損傷に対しても提案した損傷表が適応できることを確認できた. 二つ目は,制振デバイスを含んだ軸組構法木造壁の動的載荷実験の結果より,既往で提案されている木質制振住宅の簡易設計法に対し壁の塑性率に応じた低減を加えることで,非構造体を含む木質制振住宅の合理的な設計法を提案した.
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今後の研究の推進方策 |
木質耐力壁の繰り返し変形による耐力劣化について,既に経験した最大層関変形を更新しない変形のうち,耐力の劣化に寄与する範囲を把握することで,軸組工法木質耐力壁の復元力特性モデルの精度を向上させる. 対象とする試験体は梁・土台の芯々間距離が2730mm,柱の芯々間距離が910mmの軸組工法12mm合板耐力壁とした.載荷サイクルは初期の変形から段階的に変形を小さくする正負交番繰り返し漸減載荷を採用し,耐力劣化に寄与する小振幅の範囲を確認する.また,一昨年度の研究において耐力の寄与が確認できた内装壁における石膏ボードの破壊性状について,昨年度の研究における動的載荷実験にて負担耐力を低減したと考えられるボードの面外浮きがみられた.これが静的載荷と動的載荷の相違によるものである場合,地震時にも動的載荷時と同様に面外浮きが生じる可能性があり,その場合現在見込んでいる静的載荷実験により得た非構造体の耐力寄与について適応範囲の見直しや低減を検討する必要が生じる. そこで,石膏ボードを使用した,一昨年度・昨年度の試験体と同様の形状の内装壁に対して静的・動的載荷をそれぞれ行い,非構造体の破壊性状・耐力寄与と載荷方法の関係について確認する. 対象とする試験体は梁・土台の芯々間距離が2730mm,柱の芯々間距離が1820mの軸組工法壁に石膏ボード・クロスを順に取り付けた内装材非構造壁とした. これらの結果を用い,以前提案している復元力特性モデルの精度向上と適応範囲の拡大を目指す.さらに,昨年度の研究の結果を用い,非構造体・制振デバイスを混用した復元力特性モデルの提案を行うことを予定している.
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