研究課題/領域番号 |
19H00793
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
林 康裕 京都大学, 工学研究科, 教授 (70324704)
|
研究分担者 |
杉野 未奈 京都大学, 工学研究科, 准教授 (80758368)
南部 恭広 九州大学, 人間環境学研究院, 助教 (80802298)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | 地震対策 / 伝統木造住宅 / 振動計測 / 静的加力実験 / 対策レシピ |
研究実績の概要 |
[A] 動的変形特性の高精度化 ■センサー性能評価 <林> スマートフォンを始めとする加速度センサーを、住宅の耐震性能把握に活用することを目的として、センサーの性能評価を行った。その結果、スマートフォンを用いた振動計測ではSN比が低く、固有振動数を精度よく評価出来ない場合がある。また、使用機器によっても性能に差が見られた。一方、試験体を用いた適用性を検討するため、京町家を想定した2層試験体を製作した。同試験体は、大変形載荷を行い、動的変形特性(架構)の評価精度の高精度化と耐震性能評価法の検証にも用いる予定である。 [B] 伝統木造住宅の実態把握 ■耐震性能把握 <杉野・南部・林> 2019年、2020年に実施た架構実験の結果にもとづき、乾式と湿式の土壁について、微小変形から大変形領域まで追跡可能な復元力モデル(以下、DSモデル)を新たに構築した。DSモデルは、変形レベルの増大によるスリップ剛性の低下と履歴吸収エネルギーの変化を高精度に評価可能である。一方、パルス性地震動に対する最大応答変形評価精度を確認するため、Bilinear-Slipモデル(BSモデル)も構築し、応答解析を行った。その結果、パルス性地震動の最大応答を評価する上では、履歴則の違いは重要でなく、微小変形での骨格曲線の評価が重要であることを示した。次に、京都市地震被害想定で用いられた100mメッシュの地盤モデルを用いて、地盤増幅率Gsの算定を行った。その結果、京町家立地地点の地盤増幅率は、Gsの下限値(Gs=1.23)として良いことを示した。最後に、京町家2層試験体を用いいてブラインド解析を行った。8名によるブラインド解析結果が大きく異なることを示すとともに、その要因分析を行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コロナ感染拡大により、当初予定していた室内実験の実施や現地調査の実施を延期せざるをえない状況が続いた。加えて、ウッドショックや鋼材価額の高騰も重なり、試験体や実験治具の価額高騰が生じた。このため、研究計画の遅延や見直しを余儀なくされた。その一方で、研究を推進していくうちに、研究計画当初には認識していなかった、研究目的達成のためには看過できない重要な課題が見出されたため、それを解決するための課題に取り組み、当初計画では想定されていなかった優れた研究成果(木材の基準曲げ強度の非破壊推定法の提案や地盤増幅率の新提案)を上げることができた。
|
今後の研究の推進方策 |
京町家の固有振動数を推定する上で、スマートフォンの性能は十分とは言えなかったが、3棟程度選定し適用可能性を模索する。そして、人力加振を行うなど、適用可能性を向上するための計測方法の工夫やデータ処理方法の改善について検討する。また、計測を行う京町家については、衝撃弾性波試験を実施し、柱の樹種や曲げ基準強度の実態(頻度分布)についても調査を予定している。 また、2021年度に製作した京町家2層試験体の水平加力実験を行う。さらに、加力終了後に土壁を補修し、損傷状態によっては補強も行って、再度加力を行うとで、補修・補強効果の実証データを取得する。一方、本実験では、試験体の動的変形特性や固有振動低下率についても確認し、最大応答予測手法や最大応答変形推定手法の検証を行うために、微動計測を行う。また、スマートフォンなど、各種MEMSセンサーの性能評価も行う。最後に、本試験体を対象に、ブラインド解析(事前解析)とシミュレーション解析を行って、実験結果を高精度で再現可能な立体解析モデル(3次元シュミレータ)の構築を目指す。 次に、単位軸組架構を用いた試験体で、耐震補強で慣用される構造要素(格子壁など)を含んだ試験体の静的加力実験を行う。そして、各試験体の動的変形特性や復元力特性モデルの構築を行う。また、3次元シュミレータに補強要素を組み込み、パルス性地震動を入力とする時刻歴応答解析を行うことで、実効性の高い耐震補強法の検討を行う。
|