研究課題/領域番号 |
19H00794
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
五十田 博 京都大学, 生存圏研究所, 教授 (40242664)
|
研究分担者 |
森 拓郎 広島大学, 先進理工系科学研究科(工), 准教授 (00335225)
北守 顕久 大阪産業大学, 工学部, 准教授 (10551400)
荒木 康弘 国土技術政策総合研究所, 建築研究部, 主任研究官 (40435582)
中川 貴文 京都大学, 生存圏研究所, 准教授 (60414968)
中島 昌一 国立研究開発法人建築研究所, 構造研究グループ, 主任研究員 (90734210)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 木質構造 / 耐震設計 / 連層耐力壁 / ロッキングシステム / ダンパー / ドリフトピン接合 / 傾斜復元力 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は大判の各階を連続して設置される壁、いわゆる連層壁が傾斜することにより抵抗する傾斜復元力といった伝統木造の抵抗要素に、地震時にエネルギー吸収するダンパーを設置した構造について、抵抗挙動、耐震性能を明らかにするとともに設計法、評価法を構築することである。初年度に他事業と連携して実験ができ、予算の節約がはかれるという幸運に恵まれ、実大5階建て建物について、静加力実験を実施することができた。2年目は実験の全体的な抵抗挙動を明らかにするとともに、傾斜復元力、ダンパーそして、床などの各抵抗要素の水平力に対する寄与の分析、など実験結果の考察を進め、連層壁+ダンパー構造について理解を深めた。また、連層壁に用いたクロスラミネティッドティンバーの圧縮、せん断、引っ張り特性を文献と実験により定義した。文献では性能特性の把握が難しいダンパーのエネルギー吸収性能、クロスラミネッティドティンバーにドリフトピンを用いた構成した柱脚部接合部やダンパーの接合部について、実験的にその強度特性を明らかにした。さらに、5階建てではクロスラミネティッドティンバーの最大寸法である12mを超えたたため、壁の継手接合部を作らざるを得なかったが、その接合部の性能について求める実験を実施した。 今年度は初年度に実施した建物をさらに洗練し、連層壁と境界柱のシステムとして3階建て建物の設計を実施するとともに他事業との連携のもと、振動台実験を実施した。脚部を固定したシステムは大地震に対しても安定した性能を示し、またダンパーによって応答制御が可能ということが設計や解析ばかりではなく、実験の結果として示すことができた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の計画では初年度の実験を例にしつつ設計法の構築を目指して、部分実験と解析的な検討により、より効率的な構造システムを目指すというものであった。他事業との連携のもと3年目に実大の振動台実験を実施することができた。それにより、解析的な検討に加え、実際の挙動の観察もできた。木質構造では、鉄骨造の高力ボルト接合や溶接接合、鉄筋コンクリート構造の水和反応を利用した一体化は難しく、結局のところ接合部では、変形のみが進み荷重が上昇しない、いわゆるあそびが生じてしまうが、実大実験により、このあそびの影響をある程度定量化でき、次年度実施する要素実験や解析に活かすことができることになった。予定していなかった実大3階建ての実験を実施することができたため、当初の計画以上に進展していると進捗を評価した。
|
今後の研究の推進方策 |
振動台実験の結果を解析的に追跡する。そのためには要素の挙動を知る必要があり、要素実験を実施予定である。さらに、詳細な解析モデルは正確ではあるものの実務設計にはなじまないので、解析的な検討により合理的な構造システムを選定し、その適用範囲を明確にしたうえで、簡易な構造設計法の構築を目指す。
|