研究課題/領域番号 |
19H00795
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
孔 相権 山口大学, 大学院創成科学研究科, 准教授 (80514231)
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研究分担者 |
宮崎 崇文 呉工業高等専門学校, 建築学分野, 助教 (20802581)
三谷 智子 岐阜医療科学大学, 看護学部, 教授 (30378757)
村上 由希 関西医科大学, 医学部, 助教 (50580106)
三浦 研 京都大学, 工学研究科, 教授 (70311743)
今村 行雄 同志社大学, 研究開発推進機構, 学術研究員 (90447954)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 嗅覚実験 / 脳血流 / 表情 / fMRI / 空間評価 |
研究実績の概要 |
本研究は、当初の研究計画では特別養護老人ホームを調査対象に要介護高齢者の脳活動と表情測定を行うことにより、新たな空間評価手法を検討することを目的としていた。しかし、令和2年度においては新型コロナウィルスの影響のため特別養護老人ホームにおいて要介護高齢者を対象とした実験を実施することは不可能であった。そのため研究期間の延長を申請し、令和2年度、3年度が当該研究期間となる。尚、令和3年度についても令和2年度と同様に要介護高齢者を被験者とした実験は実施することができなかった。 上記理由より、研究計画の変更を行い令和3年度に健常者を被験者とした代替実験を実施した。具体的な実験内容は、1.視覚・聴覚コントロール下における脳活動と表情の測定結果を分析方法を深化させることにより再分析、2.嗅覚コントロール下における脳活動と表情を健常者(大学生)を対象に測定することの2点である。1の分析手法の深化については、昨年度まで実験に使用していたNIRSは脳の前頭前野部の脳活動を測定する機器であるが、これをfMRI(全脳活動を測定する機器)に変更し、脳活動の測定域を拡大することにより、視覚・聴覚コントロール下における脳活動の再分析を実施した。fMRIを所有する株式会社ATR-Promotionsに実験委託し3名の被験者の詳細な脳活動データを入手した。2については、令和3年11月に山口大学において健常者(大学生)18名を対象に臭い噴霧器を用い3種の臭いを発生させた際の表情と脳活動を測定した。 詳細な分析は現在実施中であるが、視覚コントロールよりも嗅覚コントロール下の方が表情変化が少ないこと、実験機器の変更への対応、要介護高齢者から健常者に被験者を変更したことによる代替可能性の検討などからデータの解析・解釈などに遅れが発生している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
嗅覚実験についても視覚実験と同様に50名程度の要介護高齢者を被験者とした実験を予定し、調査協力を得られる施設も確保していたが新型コロナウィルス流行の影響を受け、要介護高齢者施設から調査協力を全く得ることができない2年間となった。そのため、研究進捗状況は当初研究計画からは非常に遅れている。 研究計画を一部変更し、fMRIを用いた視覚・聴覚コントロール時の全脳活動の測定、要介護高齢者から健常者(大学生)に被験者を変更した嗅覚実験による脳活動と表情の測定など、現状できる範囲で代替実験を実施しているが、要介護高齢者から健常者に被験者を変更したことにより、視覚実験と嗅覚実験のデータ比較の妥当性は薄れていると捉えるのが妥当であると考える。また、NIRSからfMRIに脳活動の測定機器を変更したためデータの分析手法なども変化しており対応が遅れている。 研究期間の延長を申請し、一部代替実験を実施したものの当初の研究計画からは大きく遅れていると判断するのが妥当であると考える。
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今後の研究の推進方策 |
当初の予定では本年度で嗅覚実験を終了し、次年度より聴覚をコントロールした実験を実施予定であった。しかし、新型コロナウイルスの影響で高齢者施設での実験実施は困難な情勢となっている。加えて、令和2年度、3年度に実施予定であった要介護高齢者を対象とした嗅覚実験も実施できていない。本研究の最大の特徴は要介護高齢者を対象に普段生活している施設内で実験を実施していることにあるが、それが社会情勢で実施できていない。そのため、大幅な研究計画の変更を余儀なくされるている。新型コロナウィルスが季節性インフルエンザと同等の5類感染症に引き下げられた場合、調査協力施設で実験が可能となるため早急に嗅覚実験と聴覚実験を特別養護老人ホームで実施し、当初研究計画の遅れをできる限り取り戻す予定である。現状の2類感染症のまま維持された場合、特別養護老人ホームで実験を実施することが困難となる可能性があるため、昨年度と同様の研究計画変更を行い、fMRIによる全脳活動を測定(昨年度被験者3名)する被験者を5名程度追加しデータの精度を向上させること、健常者を対象に聴覚実験を実施することが研究の推進方向になると考える。
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