研究成果の概要 |
本研究ではこれまで培ってきた,主に乾漆造形法の要素技術をもとに,より一般的な製品を想定した具体的な実用レベルの用途開発を通じて乾漆造形技術を開発した.用途開発においては,自動車部品開発企業,印刷関連事業者等と具体的な応用事例を検討し,それぞれの形状に合わせた乾漆成型法と,積層に用いる骨材や漆と混練物の用途に合わせた最適な組成を探った.また,現代生活での利活用を想定し乾漆成形物の強度評価や成形後のVOC(揮発性有機化合物)発散評価を行った.合わせて実験室でのロボットアームによる漆掻き作業のシミュレーションを行った.
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研究成果の学術的意義や社会的意義 |
研究期間を通じて自動車関連企業をはじめ,印刷関連企業や建築関連企業など,研究期間中に秘密保持契約7件を結び本研究の技術の社会的実装の可能性について端緒的ではあるが検討が行われたことは,工芸とは直接関わりのない分野からの本研究に対する関心の高さが窺われた.学術分野では,漆の性質改善や伝統技法に関する科学的・学術的研究は様々になされてきたが,いずれも分野内での個々の議論に留まっている.本研究は技法の実際的な活用先である,建築や工業デザインといった分野と常に向き合って取り組んできたことにより,現代のものづくり技術と漆を組み合わせた実践的な研究成果となったと考える.
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