研究課題/領域番号 |
19H00802
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
川畑 友弥 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 教授 (50746815)
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研究分担者 |
三上 欣希 大阪大学, 接合科学研究所, 准教授 (40397758)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 脆性亀裂発生 / CTOD / 繰り返し載荷 / 材料損傷 / 結晶塑性 |
研究実績の概要 |
本研究の第一の目的は、溶接継手部における限界CTOD値を正確に把握するための試験片作製標準条件を明らかにし、真に評価者に依らない客観的な評価手法を提供することである。本研究の第二の目的は波浪や地震を受けた構造物の評価を考慮し、正負交番負荷による材料損傷を高精度予測し、CTODパラメータによる破壊アセスメントに組み合わせる方法を構築することである。この二つの目的達成に共通するコア技術として「ランダムな塑性変形後の結晶粒内損傷分布を定量把握するためのメゾスケール数値モデル開発」を実施する。 ①継手CTOD評価高精度化:特に問題の多い逆曲げ・プラテン法の規格化のため、各種数値解析を実施。限界値に影響を与えない範囲を考慮するための数値解析を多く実施した。規格範囲を検討中である。 ②正負交番予ひずみによる材料損傷の高精度把握:初年度は、歪勾配塑性法(SGP;Strain Gradient Plasticity)の開発に着手し、各種パラメトリックスタディに使用できるレベルまで完成度を高めることができた。このモデルを用いて今年度実施した検討は予ひずみ脆化以外にも以下の通り多岐に亘る。1)多軸応力場での塑性変形損傷の特徴把握、2)予ひずみ脆化のメカニズム、3)結晶粒径の損料に与える影響、4)粒内・粒界第二相の損傷に与える影響調査 そのうち、2)予ひずみ脆化のメカニズムは損傷に寄与しない載荷領域をSGP法で精度良く求めることに成功し、実験により得られた損傷を説明できる。予ひずみパターンによる脆化状況の相違に関する実験/数値解析的検討はトップジャーナルへの公表も進み、大きなインパクトを与えられた。また、CPについても既存のオープンモジュールを用いた数値解析を試行できた。 また、これらの損傷を観察するための世界初のFE-SEM内二軸引張試験機を製作した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
SGPの開発は殆ど完成に近いものである。「研究実績の概要」欄に記載した通り、予ひずみ脆化問題のみならず、1)多軸応力場での塑性変形損傷の特徴把握、2)結晶粒径の損料に与える影響、3)粒内・粒界第二相の損傷に与える影響調査、などの検討も既に行うことがきるなど目を見張るものである。Validation実験のために導入した二軸引張試験機も利用し、来年度以降の活動に多いに期待いただける内容と考えている。
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今後の研究の推進方策 |
①継手CTOD評価高精度化:プラテンによる材料損傷について、幾つかの数値解析的、実験的検討を既に実施しているが、今年度はさらに最適化手法などを用いて好適範囲の絞りこみを行いISO規格化につなげたいと考えている。 ②正負交番予ひずみによる材料損傷の高精度把握:単なる正負交番予ひずみ時の損傷に関する検討はほぼ終えたので、多軸応力場下、方向の異なる予ひずみ付与後などの実際的な検討を進めて行きたい。さらに平行して実施している材料組織的検討も進め、こうした地震波浪による歪により損傷が進行しにくい材料組織の在り方について普遍的知見が得られるような活動を行っていきたい。Validationのために導入した顕微鏡内その場観察二軸引張試験機は世界で初めても試みであり、観察結果などは多く発表していきたい。
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