研究課題/領域番号 |
19H00805
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研究機関 | 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構 |
研究代表者 |
森田 泰弘 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 宇宙科学研究所, 教授 (80230134)
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研究分担者 |
佐伯 孝尚 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 宇宙科学研究所, 助教 (10415903)
三浦 政司 鳥取大学, 地域価値創造研究教育機構, 准教授 (80623537)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 宇宙機システム / 固体燃料ロケット |
研究実績の概要 |
比較的低い温度(100℃以下)で溶けるゴム状の低融点樹脂に酸化剤を混ぜ常温で硬化させる革新型固体ロケと推進薬(低融点固体ロケット燃料:LTP)の研究と、それを応用した 高度50km級の小型ロケット(LTP-135/直径135mm)の開発を確実に進めた。 2018年度までに実施した地上燃焼試験により、推進薬の製造性や燃焼特性について詳細なデータを取得して設計の妥当性を検証することで推進薬の概念設計を終えた。加えて、超小型ロケットを用いた飛行試験により、推進薬の製造開始から打ち上げまでの大幅な時間短縮を実証している(従来の数週間から1日に短縮)。 2019年度は、全体計画の次のステップとして、ロケットモータの大型化の研究を開始した。具体的には、推進薬ブロックをセグメント方式で結合(多連装)することによりモータを大型化するというコンセプトを新たに考案し、モータの予備設計(地燃モデルの設計)を固めた。その妥当性は、サブサイズモータ(直径60mm)の燃焼試験を実施することで検証した。これによりロケットの大型化に向けた研究が本格的にスタートした。 これらを背景に、2020年度は、ロケットモータの大型化の研究を確実に前進させた。具体的には、セグメント方式のロケットモータの設計を詳細化し、FM仕様(軽量化仕様)のモータ設計(基本設計)を行った。これに基づきFM仕様のサブサイズモータ(直径60mm)を試作し、組み立て試験及び気密試験を行って、設計の妥当性を検証することができた。新型コロナウィルス流行の影響を多大に受けてはいるが、最終目標であるLTP-135ロケットの予備設計を前倒して行うとともに、サブサイズモータの開発を無事に完了した。 2021年度は実機サイズのモータ設計を進める計画である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
やや遅れている部分もあるが、先行している部分もあり、研究計画全体としてはおおむね順調に進展していると言える。 実績概要でも述べたとおり、新型コロナウィルスの影響はあるものの、LTP-135及びLTP-135Subの予備設計を前倒しで終了した。推進薬ブロックをセグメント方式で結合することによりモータを大型化するというコンセプトを確立し詳細の設計を固めるとともに、地上燃焼実験により設計の妥当性を検証する計画を設定した。また、地上試験用のモータの製造を完了し、組立試験における部品の仮組みと気密試験(約0.7[MPa]のリークチェック)を通して、構造上の問題がないことも確認した。次のステップである地上燃焼試験に向けた準備も整っており、おおむね計画通りに進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度は低融点固体燃料の大型実用ロケットへの実装研究を加速する。具体的には最終目標である高度50km級ロケット(LTP-135)とその先行実証機(LTP-135SUB)の設計を詳細化する。推進薬については、2019年度までに製造性(溶融性と流動性)および燃焼特性(燃焼速度)について優れた性能を発揮する樹脂を試作、地上燃焼試験(薬量330g級)と超小型ロケットによる飛行試験(高度1000m級)の成功をもって要素研究の段階を終了した。これを受け、2020年度は機械的物性(引張強度等)について改良を行い、LTP-135クラスの大型ロケットに必要十分な特性を得たことを特性試験により明らかにした。さらに、試作モータ(先行実証機LTP-135SUB想定)の設計を固め製作を行った。2021年度は、この試作モータの地燃燃焼試験を行い、革新的推進薬の技術成熟度を一段階高める。また、その先のイプシロン級の大型ロケットに適用することをも視野に入れ低融点推進薬の機械的物性をさらに向上させるために試作試験等を繰り返し、改良型低融点樹脂の候補の洗い出しと絞り込みを継続する。
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