研究課題
研究初年度である本年度はポーリングに適したナノ秒パルス電源を試作した。更に、電極、計測器、加熱機構を統合したナノ秒パルスポーリングシステムを構築した。ナノ秒パルス電場であるために空気中の絶縁破壊電圧以上の電場を印加しているにもかかわらず、放電せずにポーリングが可能であるため、通常必要な絶縁油が必要なく、ポーリングが可能となる。従って従来ポーリングが困難であった、絶縁油で絶縁することのできない高いキュリー点を有するバルク誘電体のポーリングが可能となり、誘電体の材料選択の幅を広げることが出来るかどうかを検証した。強誘電体バルク材料の作製プロセスにおいてオイルフリーの分極処理を実現するため、富士セラミックスのPZT C-203材をナノ秒パルス電場ポーリングし、共振-反共振法により圧電特性の評価を行った。通常の大気中において、絶縁油を使っていては到底実現できない380 ℃まで加熱し、繰り返し周波数10 kHz, パルス幅300 ns, 電圧1 kVのナノ秒パルス電場を2 hr印加した。その結果、0.24の電気機械結合係数kpが得られた。また、X線CT画像の観測により、少なくとも50μm以上のクラックは発生していないことが確認できた。以上のことから、バルク材料において絶縁油を用いずに高温度雰囲気下での分極処理を実現することができた。以上のことから、従来ポーリングが困難であることから利用が難しかった高いキュリー点を有する誘電体を活用できる道筋をつけ、誘電体の用途拡張を実証した。
1: 当初の計画以上に進展している
当初予定していたナノ秒パルスポーリングに最適な電源、電極、計測システムおよび加熱機構からなるポーリングシステムを試作することに成功している。更に、当該システムにより3種類の異なる物質に対してナノ秒パルスポーリングの有効性を検証し、当該パルスポーリングシステムが極めて優れたシステムであることが明示した。このことにより、従来ポーリングが困難であった高温にキュリー点を有するバルク誘電体の実用化に対して大きな知見を得ることに成功したため。
当該手法を更に多くの材料系に展開する。更に、ナノ秒パルスポーリングが他のポーリング手法と比べて、工学的な側面だけでなく、物理的な側面からの優位性があるかどうかを検証する。
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すべて 国際共同研究 (4件) 雑誌論文 (7件) (うち国際共著 5件、 査読あり 7件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件) 備考 (1件)
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